カメラが進化したいま、極端なことを言えばスマートフォンでも性能に大きな違いがあるわけではない。調光などの技術自体は、数か月で学ぶことができてしまう。
だからこそ、技術以上に重要なのが、「何を被写体に選び、それをどういう形で表現したいのか」を部員が自分の頭で考えることなのだ。
写真が持つ「ストーリー」を自分で考えること
「写真甲子園でも、大会では教員が指導できへんのです。僕がああだこうだいう癖をつけると、向こうで撮れないですもんね。当たり前ですけど、生徒と僕の思う写真のイメージって絶対にちょっとズレがあるんです。僕が『こう撮れよ』と言ってしまうと、そのイメージのズレに引っ張られて、うまくいかないんです。自分で考えて、何を撮ってどういう風に表現したいのか――そこを考えられるようにならないと意味がない」
写真甲子園では1枚の写真で評価されるわけではなく、8枚1組の「組写真」を日替わりのテーマで撮影し、優勝校を決めることになる。そのため、より写真のストーリー性や、撮る側の意図が重要になるのだそうだ。
「写真甲子園って3人で行くんですけど、やっぱり本番は無理するんですよ。それで体調壊したりする。朝4時くらいから撮って、夜12時くらいに寝る、みたいなのが数日続くんで。だから結局、ひとりで出ても優勝できるくらいにしとかんと、勝つのは無理なんですね」
「曲がり角でどちらに曲がればいいものが撮れるか分かる」
それゆえ普段の部活での撮影でも、決めたポイントまで車で部員たちを連れて行ったあとは、基本的に「何もしないです。車内で寝ていることもあるくらい(笑)」なのだそうだ。
「すごいですよ、パッとおろした街角で、知らんおばあさん撮ってきますから。どうやって見つけて、どういう風に交渉して撮ったんやと思いますけど。いまはコロナやから難しいけど、普段はどうやって入り込んでいるんか…私もわからんですけどね。
沖縄の先生に言われたのは、『街角で右に曲がるのと左に曲がるのと、どっちに曲がったらいいのかというのが分かるようになる』らしいんですよ(笑)。こっちに行った方がいい被写体が撮れるって。そういうもんかなぁと思って。そこはもう生徒に完全に任せてます」
写真を撮るという行為を、いかに自分なりの狙いを持ってできるか――。
そこに込められた撮る側のストーリーがあるからこそ、神島高校の写真には魅力があるのだ。
撮影=松本輝一/文藝春秋
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