中国大陸では「邪教」扱いだが……
事実、中国大陸において真佛宗(霊仙真佛宗)は、1995年から公安部によって「邪教」(≒破壊的カルト)とされ、法輪功などと並んで取り締まり対象になっている。地元の台湾においても、過去には『壹週刊』などの雑誌で、教祖の女性問題や金銭問題にまつわる複数のスキャンダルが報じられたことがある。
もっとも、中国国内における「邪教」認定とは、その宗教が中国共産党体制に不都合な存在だという意味でしかない。また、台湾のマスコミはかなり針小棒大なスキャンダル報道をおこなう。火のないところに煙は立たないとはいえ、台湾国内のゴシップ報道だけをベースに教団の性質を理解するのはフェアではない。
真佛宗は台湾国内では、国民党の韓国瑜(元総統候補)や呉敦義(元行政院長)、民進党の頼清徳(現副総統)など、与野党を問わず大物の政治家の訪問も受けている。政治家が選挙対策など目的として顔を出しても、社会的評価がマイナスにはならない対象、といった程度には、世間でそこそこ認知されている教団ということだ。
あくまでも私個人の感覚だが、オウムや統一教会のように本気で危険な破壊的カルトと十把一絡げにしてしまうのは、ちょっと気の毒な気もする。少なくとも日本国内の真佛宗については「台湾のちょっと変わった新宗教」くらいのイメージであり、危ない雰囲気は感じない。
混ぜるな危険!
では、真佛宗の日本最大の拠点、住吉山雷蔵寺の山内を詳しくご案内していこう。入り口の石碑をすぎると、左手にあらわれるのは巨大な観音像と石の獅子だ。
そして観音さまの右手の坂を登ると、なぜか弘法大師を祀った大師堂。その左手の石段には玄武・白虎・青龍・朱雀の四神(スーシェン)のレリーフがついた黄金の鳥居が三つ連なり、これらをくぐった先には、カナダのトロント市在住の香港人信者が寄贈したという黄大仙(広東文化圏で人気が高い仙人)と、媽祖や関帝といった道教の神々が祀られている。
さらに鳥居の左手には、ヒンドゥー教やチベット仏教の象頭神であるガネーシャが10体ほど祀られていた。あるガネーシャの前に供えられていたのは、日本の招き猫がプリントされた米俵。さらにガネーシャコーナーの奥には、巨大な仁王や不動明王の像もある。
謎の“台湾密教地蔵”
また、足を戻して大師堂の右手の坂を上がると、「福徳地蔵尊」という、もともとこの山に安置されていたお地蔵さまが祀られている。山中で荒れ果てていた小さなお堂を整備したらしく、新しい花と供え物があった。
その隣には十二支の石像、さらに近年完成した八角堂がある。堂内に入れてもらったところ、宇宙空間を模した天井には北斗七星とカシオペヤ座が輝いていた。