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2021/01/13

 静香さんは若き日に宝石会社に勤務し、社内で全国トップクラスの売り上げを叩き出した凄腕のセールスレディだったそうで、そのスキルと情熱を寺の建設に注ぎ込んでいるのである。住吉山雷蔵寺は、在日台湾人のパワフルなおばちゃんの腕一本で作り上げられたものと言っていい。

地域に溶け込む珍寺

 静香さんは気さくな台湾人のおばちゃんである。日本で新宗教の取材をおこなっていると、浮世離れしすぎて一般人とのコミュニケーションが難しい人に出くわすケースもあるのだが、彼女にそういった雰囲気はない(ただし「中国大陸で邪教と呼ばれていることをどう思いますか?」と質問すると本気で怒られる)。

 人当たりがよく営業上手な静香さんの人柄のためか、住吉山雷蔵寺はかなり地域に溶け込んでいる。寺の公式YouTubeチャンネルの動画を見る限り、正月などには地域の子どもたちを招いて餅まきもおこなっているようだ。寺が祀ったり整備したりしている福徳地蔵尊のほこらや白長大神の神社も、地域の老人から世話を頼まれたらしい。

インドのガネーシャ(左手前)と金ピカ鳥居(右奥)と道教の神々を祀ったお堂(中央奥)。相変わらずものすごい光景だ。

 雷蔵寺の熱心な信者の一人には、大阪府内に本社を置く某台湾系大企業の幹部がいる(信心深い人らしく、寺の建設にかなり貢献しているようだ)。また、寺の行事の際には、阪南市はじめ近隣自治体の市長や市議、さらに事実上の台湾大使館である台北駐日経済文化代表処の職員らがしばしば参加しており、大阪府南部地域と台湾の政財界を草の根でつないでいる。

 日本側の要人たちが、真佛宗の中国国内や台湾国内での位置づけをちゃんと理解しているかは不明だが、事実としてこの寺は地域と台湾の貴重な架け橋の役目を果たしているのである。

 阪南の台湾珍寺・住吉山雷蔵寺。コロナ禍によって海外に出られない昨今、身近な異世界スポットとして一見をおすすめする。

撮影=安田峰俊

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 法輪功や全能神から、真佛宗やまともなプロテスタント系地下教会の一派まで。中国大陸で「邪教」認定されてしまった諸宗教と、洪門(チャイニーズ・フリーメーソン)をはじめとした秘密結社の現在を追う安田峰俊の新著『現代中国の秘密結社』(中公新書ラクレ)は2021年2月6日刊行です。

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