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スゴすぎる「無印のレトルトカレー」、マニアの度肝を抜いた立役者の正体

2021/01/24
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カレーマニアの度肝を抜いた食品メーカーの存在

 マニアが絶賛し、そしてまた新たなマニアをも生み出している、そんなアグレッシブすぎる商品展開の陰には、その立役者とでも言うべき存在があります。それが無印良品のカレーの製造を一手に引き受けているにしき食品(宮城県)。80年以上の歴史を持つ食品メーカーで、「にしきや」のブランドを冠した高品質なレトルト食品専門企業として知る人ぞ知る存在です。

 このにしき食品がカレーマニアの間で一躍有名になったきっかけが、2012年に販売を開始した「レトルト南インドカレー」でした。当時はそもそも本格的な南インドカレーが食べられる専門レストラン自体がまだ数も少なく、そしてそれらはほぼ東京周辺に限られていた時代。ましてそれを本場の味そのままにレトルト商品化して全国発売するメーカーは他にはもちろん皆無でした。

 サンバル、ラッサム、チキンクルマ、ポークビンダルといった、日本では全くと言っていいほど知られていなかった南インドカレーが同社によって次々と商品化された事はカレーマニアたちの度肝を抜きました。私自身もその「度肝を抜かれた」ひとりです。以来私はにしき食品の熱烈な一ファンとして(そして日本における南インドカレー普及を目論む同志として)、同社の動向に常に注目してきました。

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 その中で知り得たこと、それはこのにしき食品の商品に対する徹底したこだわりです。

©getty

現地でのレシピ採取や研修、材料の国内での栽培も…

 レトルト南インドカレーの開発に際しては、その時代から現在に至るまで毎年のようにインド現地でのレシピ採取や研修を行なってきたそうです。また、本場インドの味を再現するのに不可欠ながら日本ではほとんど流通していない「カレーリーフ」や「パニール」といった食材は生産者と提携し国内での栽培や製造を行っています。

 また、レトルト南インドカレー発売以前から一貫しているブランドポリシーもまた重要な意味を持っています。それは、添加物を一切使わず原材料となる食材に一切妥協しない、というもの。このポリシーは、基本的には「家庭料理」「伝統料理」である南インドカレーの再現においても重要な意味を持つだけでなく、以前から手掛けていた欧風カレーや創作系カレーでも貫かれてきたということです。

 にしき食品のそんなこだわりやポリシー、そして蓄積してきた技術が、まさに無印良品が求めていたもの、ということだったのでしょう。南インドのみならず、北インド、タイ、そして今やマレーシアやインドネシアまでも網羅するエスニック系レトルトカレーに関して無印良品は「あくまで本場の味を届けたい」という考えを持っているそうです。

 しかしこれはまさに「言うは易し行うは難し」の世界。風土も違えば食材も違う日本で、しかもレトルト加工という極めて技術的制約の大きい商品形態としてその味を作り上げるのは簡単なことではありません。さらに言えば、技術面の高いハードルをクリアして本場の味を再現することに成功したとしても、その味は一般消費者に受け入れられるものでなければ意味がありません。