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 なお、『鬼滅の刃』に関してはこれまでの記事(「炭治郎は脇役だった? 海外にも鬼が?『鬼滅の刃』をもっと楽しむ豆知識10」「心を燃やせ――『鬼滅の刃』映画で大人をも泣かせる『キャラ達の熱さ』」)で詳細に紹介したため、ご興味のある方はそちらを参照いただきたい。

 また、今回のテーマに言及するにあたり、作品によってはごくわずかではあるが最新の内容にまで触れているものも存在する。具体的なネタバレは避けるが、単行本派・アニメ派の方はご容赦いただければ幸いだ。

1.『僕のヒーローアカデミア』

リアリティのある「心身の追い込み」の先駆け

『僕のヒーローアカデミア』(堀越耕平) 1~最新29巻/集英社

 リアリティのある「心身の追い込み」という近年の漫画のトレンドを考えたときに、ひとつの先駆けといえるのが、この『僕のヒーローアカデミア』だ

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 本作は、世界総人口の約8割が、「個性」と呼ばれる特異体質という設定が敷かれている。その世界においては、世の秩序を守る「ヒーロー」という存在が職業化していた。

 主人公の緑谷出久は、「無個性」というハンデを抱えながらも、ヒーローを目指して奮闘していく。

 一見すれば王道のジャンプ漫画の継承者といえる存在だが、『僕のヒーローアカデミア』にはひとつ大きな特徴がある。それは、主人公の傷が蓄積されていくということ。

 出久はNo.1ヒーローのオールマイトから超パワーの個性を譲渡されるのだが、一朝一夕で使いこなすことはできない。それどころか、無理に個性を発動すると、収まりきれずに骨が折れ、筋肉が裂傷を起こし、大けがを負ってしまう。

 バトル漫画では往々にして「回復キャラ」が存在するのだが、『僕のヒーローアカデミア』においては治癒能力を持つキャラクターは登場するものの、なかったことにするわけではない。「本人の治癒能力を加速度的に高める」だけだ。

 そして、出久においては、困っている人を「救ける」ために無茶な個性の使い方をした代償として、右腕を中心に傷が増えていく。これは、作者の堀越耕平氏のポリシーだという。