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鬼滅、呪術廻戦……ヒット漫画から考察 過酷でリアルな「令和ヒーロー」の条件

2021/02/14

source : 提携メディア

genre : ライフ

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 誹謗中傷というテーマは、昨今の映画やドラマでも取り上げられるようになったトピックだが、中でも『【推しの子】』での描かれ方は、群を抜いて真に迫っている

 個々人が発言力を持ち、SNSの投稿で人を死に追いやることすら可能になってしまった現代。その社会問題から目を背けず、リスクを背負って描き切る覚悟が、本作からは強く感じられる。

 第1話の時点で、アイドルのアイに「みんな気付いていないけど 私達にも心と人生があるし」と言わせるなど、コンテンツとして消費される儚さ/コンテンツとして消費してしまう残酷さをえぐり出し、私たち個人個人に責任感の所在を問いただす問題作。毎話サプライズが仕掛けられており、今後の展開から目が離せない

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「心身の追い込み方が際立つ、リアル志向のファンタジー漫画」。今回は5作品を紹介したが、他にも2021年1月25日の最終話公開と同時にTVアニメの制作が発表された『地獄楽』等々、壮絶な展開を臆さず描き切る力作は多数ひしめいている。

 スマッシュヒットを飛ばす『SPY×FAMILY』も、ベースはコメディだが、戦争の悲惨さを訴える描写がしっかりとあるのが印象的だ。『さんかく窓の外側は夜』は、“心霊”というテーマを、現実世界の枠組みのなかに混ぜ込んでおり、論理的な思考が際立っている。

 ファンタジー漫画以外でも、この傾向は顕著。先日、TVアニメ化が発表された『ブルーピリオド』は、美大を目指す高校生の奮闘を、シビアに見つめている(美大入学後も、主人公が己の技量の足りなさに追い詰め続けられる、という描写がリアルだ)。人気サッカー漫画の『GIANT KILLING』は、56巻にして、ネットの誹謗中傷が選手を追い詰める描写にまで踏み込んできた。

 読者が現実逃避できる、夢の世界や理想郷を見せてくれるのも漫画の大切な役割だが、フィクションであっても不寛容の時代とちゃんと向き合い、人間や社会の本質を鋭く描くのもまた、創作物においては重要だ。

 世界は残酷だが、私たちは生きていかねばならない――。特にいま、人々が求めているものは、そのような想いが浸透した、「突き刺さる」物語なのかもしれない。

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SYO

映画ライター・編集者。映画、ドラマ、アニメからライフスタイルまで幅広く執筆。これまでインタビューした人物は300人以上。CINEMORE、Fan's Voice、映画.com、Real Sound、BRUTUSなどに寄稿。Twitter:@syocinema

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