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2021/02/14

source : 提携メディア

genre : ライフ

4.『BEASTARS』

この気持ちは恋? 本能? 唯一無二のハードな世界観

『BEASTARS』(板垣巴留) 全22巻/秋田書店

 ここまでは週刊少年ジャンプの作品を紹介してきたが、週刊少年チャンピオンの作品で、アニメの第2期もスタートした『BEASTARS』も推したい。

 本作は、擬人化された動物たちが住む世界を舞台に、ハイイロオオカミやアカシカ、ドワーフウサギが「肉食」「草食」といった宿命に抗おうとするさまを描く青春群像劇。2018年の第11回マンガ大賞で大賞を受賞したことも、記憶に新しい。

『BEASTARS』は、一にも二にも、世界観がハードだ。この世界では肉食と草食が共存するため、お互いの本能を隠している。だが、肉食獣は「裏市」というものを作り上げ、そこでこっそりと草食獣の肉を買っている。

 さらに、巷では肉食獣が草食獣を食い殺す「食殺事件」が横行。草食動物は内心では怯え、肉食動物は本当は飢えている。

 そんななか、ハイイロオオカミのレゴシは、ドワーフウサギのハルを一度は食べようとしてしまうが、やがてその想いは恋心へと変わっていく。とはいえ、肉食獣と草食獣の共存は試練の連続で……。

 描かれるのは擬人化された動物であり人間ではないが、私たちが持つ差別意識や支配欲といったダークな側面、さらには恋愛の難しさといったディープな内容に果敢に切り込んでおり、人間同士の物語以上のインパクトを与えることだろう。

 寓話的なエッセンスでメッセージ性あふれる物語を構築した、作者の板垣巴留氏の感性にうならされる。

“心の在り様”を丁寧に掘り下げる

 緻密な設定で輝くのは、キャラクターたちの心情描写だ。全員に正の面と負の面があり、それぞれが「肉食」「草食」という自己アイデンティティに苦しみながら、居場所を模索していく。

 綺麗ごとで片付けず、聖人君子として描くこともせず、“心の在り様”を丁寧に掘り下げていく本作は、まさに「リアル志向のファンタジー」にふさわしい

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