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自分では何もコントロールできない世界
その後、練習しながら彼がグラウンドに戻ってくるのを待っていたが、なかなか姿をあらわさない。
やがて、練習を終えてロッカーに上がると、フロントの幹部が「フジ、ちょっと来てくれ」と僕を呼びにきた。案内された部屋には、ゼネラルマネジャー(GM)と監督、そしてマダックス投手コーチが顔をそろえていた。
「フジ、悪いが、開幕はリハビリ組でスタートしてもらう」
そう僕に告げたのは、マダックス投手コーチだった。僕は、一瞬、事情がよくのみ込めなかった。
「いや、僕はもう準備ができています」
そう言って、僕は右肘の回復具合と大胸筋の状態を説明しようとした。すると、僕の言葉をさえぎるように、監督が口を開いた。
「決めるのは私の権限だ。私が決める」
そのひと言で、僕のマイナー行きが決まった。
どうにも納得できないまま僕が部屋を出ると、GMとフロント幹部が追いかけてきて「フジ、悪いががまんしてくれ」と、僕をなだめた。
彼らははっきりとは口にしなかったが、迎え入れたばかりの監督の機嫌を損ねたくないと考えていたようだ。
球団側の意向を察して、マダックス投手コーチも監督に異を唱えることを控えたのだろう。このとき、僕はもう開幕などどうでもよくなっていた。