映画『新聞記者』の監督・藤井道人の最新作が1月29日に公開された。『ヤクザと家族 The Family』である。
本作は2010年代に全国各地で暴力団排除条例が施行されたことにより、「絶対悪」「反社」として社会から排除されていったヤクザの現在を題材にした作品だ。時代の変化とともに彼らを取り巻く環境はめまぐるしく変わっていった。
これまで「ドキュメンタリー」としてのヤクザは多くの作品で描かれてきている。そんな中で、あえて今回藤井監督が「劇映画」としてヤクザをとりあげた理由はどこにあったのだろうか?(全2回の2回目/#1から続く)
◆◆◆
家族のあり方を主題にしたヤクザ映画
――ドキュメンタリーやノンフィクションで暴力団を取材したものが数多くあるなかで、劇映画であえてそれを題材にする意義はなんでしょうか?
藤井 僕の好きなドキュメンタリーに、熊谷正敏さんという現役ヤクザの日常を追った『Young Yakuza』(フランス・2008年)という作品があります。ここにはドキュメンタリーがもつ、外面を捉えるチカラの強さがあります。一方でドキュメンタリーでは、インタビューはできても、なかなかその人たちの細かい感情の動きを追うのはできないのではないかと思います。劇映画でやりたいのはそこを描くことです。
そうしたとき、フィクションでヤクザを題材にするには内面のテーマとしてなにかが必要となってくる。そこで選んだのが家族の物語です。血のつながった家族もあれば、ヤクザ組織のような血のつながりを超えた「疑似家族」もある。こうした家族のあり方を主題にしたヤクザ映画を撮ったら面白いんじゃないか。そう考えました。
家族と一緒に食事をする場面を練りこんで
――「山本賢治」がヤクザの親分に最初にかけられた言葉は「なんか食うか」でした。その温情にすがるようにして疑似家族になる。このように人と人のつながりだったり、居場所だったりが「食う」ことで表現されています。
藤井 そうですね。憩いの場が「オモニ食堂」という韓国料理屋だったり、なにかと食事のシーンが出てきます。綾野さんが演じた「山本賢治」の人生で、一番幸せな瞬間はなんだったのだろうかといえば、それは家族と一緒に食事をする時間だったと思います。そうした場面を1章から3章に練り込んだという感じです。