15年前から大行列の秘密
――そもそも、なぜ港屋という名前の店を虎ノ門に出したのですか?
菊地 港屋という名前は店が港区だったから。虎ノ門が好きな街だったから、虎ノ門に店を構えたのです。
――店が人気になったのはいつごろからなんですか?
菊地 ありがたいことに、15年前の開店当初からです。虎ノ門、新橋界隈には、感度の高い人たちがたくさんいたんです。このあたりはマスコミや広告関係の人もお昼時には多いですから。今もいます。そういう人たちがまだ人気になる前にうちを見つけてくれて、TVや雑誌で紹介されて人気になっていったんです。あと、このあたりに立ち食いそば店がなかったのも、珍しかったんじゃないかな。お客さんには感謝してもしきれないです。
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「あとの1割」に何を使うか、こだわっています
「港屋」のそばは特徴的だ。コシのあるモチっとした麺である。田舎そばとも違う。冷麺やうどんではモチモチ感を出すためにでんぷん粉などをつなぎに入れることがある。しかし、多くの業者が港屋の麺を調べたが、結局わからなかったという逸話もある。
――港屋のそばの成分は何か、と話題になっていますね。
菊地 タピオカ粉が入っているとか、布のりが使われているとか、いろいろ皆さん推理してますよね。もちろん、企業秘密の部分もあり、公にはできませんが、複数の粉を使っています。しかし、そのほとんどはそば粉と小麦粉です。あとの1割に何を使うかにこだわっています。
――この独特の食感はどうやって出しているんですか?
菊地 ベストの食感をいつも出すのは至難の業です。非常に難しい。同じ製粉屋さんから同じ産地を指定して粉を仕入れても、まったく違うことがあります。そういう粉をどうすればインパクトのあるそばにできるか、いろいろな配合をためしてみたんです。そして出た答えが「その時の粉の状態によって配合を変化させる」ということでした。だから、こうだという配合はありません。臨機応変に組み合わせる技術やカンみたいなものが必要ですね。
ある時、米粉をほんの少し入れてみたことがあります。通常はやりませんが、そのそばはコシが素晴らしく好評を得ました。そういう実験的なこともたまにこっそりやっています。