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コロナ禍で“3割引き”の一等地、絶好調の個人向け不動産…進む不動産業界の「二極化」現象社会 明暗分けるその境界

2021/02/10

空いた「一等地」の行方

——不動産業界で大きく変わった点は何でしょうか?

「やはり飲食店の撤退です。大手飲食チェーンは店を閉じ、固定費を抑えてコロナ禍をやり過ごそうとしています」

——路面店が抜けると、街は空きテナントばかりになってしまいますね。

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「実はそうでもないんです。空いた一等地には別の大手飲食チェーンが代わりに入り始めています。小さな飲食店も頑張っていて、赤坂周辺ではコロナ禍になってからも新規開店やリニューアルオープンするお店が増えています」

「ディスカウント率でいえば3割引」

——コロナ禍で外食産業が厳しい中、なぜ、出店するんでしょうか?

「コロナ禍前よりも一等地が安く借りられるからです。ディスカウント率でいえば3割引ぐらいでしょうか。その場所を以前から狙っていた企業にとって、今は出店チャンスです。小さな飲食店もデリバリーやテイクアウトなど業態を変化させながら、少人数で運営する方法を見つけ始めており、飲食店の全てが撤退しているわけではありません」

——想像していたよりも飲食店は頑張っているんですね。

「でも、現状は撤退されるお店のほうが圧倒的に多いです。特に昼間の人口は多いけど、夜に人が少なくなる街の空きテナントは増加傾向にあります」

——たとえば?

「神田駅周辺は事務所や店舗ビルが多くて、土日には人がいなくなる街なので撤退するお店が増えています。新宿駅の北側から新大久保方面に抜ける街も空きテナントが増えていますね」

神田駅周辺など「昼間の人口は多いけど、夜に人が少なくなる街」には大きな変化が ©️iStock.com

生き残りのカギは時流に合わせた「業態」

——そういう街だと、居抜きでも入らなそうですね。

「立地条件さえ良ければ、飲食店以外の業態が入るケースも増え始めています。たとえば新橋駅のSL広場前にオープンした『新型コロナPCR検査センター』は、その典型例だと言えます。他にも、撤退した店舗を改装してシェアオフィスや共同事務所として、再オープンする物件も増えています」

——テレワークの普及でシェアオフィスの需要は高まっていますからね。その時流にあった業種業態が、賃貸として新たに入ってくるということですね。

「飲食店に関しても、ファストフードチェーンの撤退が目立ちますが、一方で換気によって感染対策が比較的取りやすい、焼き肉店の出店数は増えています。出張する人が減ってビジネスホテルも苦戦していますが、おそらく今後はマンションに改装される流れになっていくと思います」

換気がとりやすい焼き肉店の出店数は増えている ©️iStock.com

海外の投資家から見れば安定性が高い日本の不動産

——売却される電通やエイベックスの本社ビルも、何か別の業態が入って埋められていくのでしょうか?

「仮に売却される大きなビルがあったとしても、小口の投資家を抱えている機関投資家や外国人投資家が買ったりするので、立地条件のいい一等地のビルはすぐに買い手が付くと思います。海外の投資家から見れば日本の不動産は安定性が高いですし、大箱を求めている元気な企業もまだまだ日本にはありますからね。一等地のビルで新たな入居者を見つけるのに苦労はしないと思います」