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コロナ禍で“3割引き”の一等地、絶好調の個人向け不動産…進む不動産業界の「二極化」現象社会 明暗分けるその境界

2021/02/10
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実は絶好調な個人向け不動産

——でも、法人向けの賃貸は業態変化で凌げたとしても、個人向けの不動産はコロナ不況で買い手がつかないのではないでしょうか?

「ところが個人向けの不動産は昨年の春先からも好調で、特に10月頃から絶好調なんです。都内高級住宅地では豪邸のような大規模土地の売買取引が増加し、億ションも調子よく売れています。 賃貸物件の家賃は下落傾向にありますが、不動産物件はその逆の動きをしています」

個人向け不動産は好調が続く ©️iStock. com

——なぜ、消費の動きが鈍いのに、不動産の売買は好調なのでしょうか?

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「富裕層の所得がコロナ禍でも落ちていないからです。株価の影響もあると思いますが、『コロナ禍でも不動産は下がらない』と分かった富裕層が、一気に買いに走っているのが現状です。あと、サラリーマンは長期化するコロナ禍の影響で今年度から年収が下がり始めますから、今のうちにローンの審査を通しておきたいという人も一定数いて、それで不動産の売買が盛んになっているという背景もあります」

容赦なく進む不動産業界の二極化現象

——想像していたよりも、不動産業界は好調なんですね。

「そうとも言い切れません。立地や建物のクオリティが高いところはすぐに買い手も借り手も見つかりますが、条件が悪い物件はコロナ禍前よりも明らかに手をつける人が少なくなってきています」

——二極化しているということでしょうか?

「その通りです。駅から10~20分以上離れたテナントはコロナ禍前よりも借り手がつきにくくなっています。価格を下げても借り手がほとんどつきません。今までは駅から離れた小さな物件でも、飲食店や民泊などのビジネスを成立させることができていましたが、それも海外からの人の往来が減った今では、価格が下がる一方です」

都市圏では駅からの距離で「勝ち負け」がはっきりつきつつある ©️iStock.com

二極化の境界は…

——二極化の境目みたいなところがあるのでしょうか?

「不動産は地理的要因だけでなく、駅の人気度、地域のブランド、建物の築年やクオリティ等で価格が決まりますからね。境目を断言するのは難しいです。ただ、強いて言うなら都市圏では駅から5分あたりがボーダーラインになっている印象です。分譲住宅であれば12~13分以内であれば需要がありますが、それ以上離れると厳しいといった感じです」