——二極化といっても、見極めは難しそうですね。
「より良い物件は好まれて、マイナス要因の数が多くなればなるほど需要がなくなっているということです。これからは不動産本来の競争力を見抜くことが重要になってくると思います。たとえばコロナ禍以前では、駅から遠くても『インバウンドが増加しているから少し離れたところでもはじめよう』と郊外にホテルを開業した事案も少なからずあった。そうしたケースでは今後、『そもそもホテルの立地として最適だったのか?』と問われていくと思います」
——コロナ禍前までの不動産はバブルだったということでしょうか。
「用途を超えた無理な不動産に、高い値がつき過ぎていたところは大いにあったと思います。飲食店もしかり、オフィスもしかり、その場所にそこまでの高い付加価値がないのに、借り手が多かったのがコロナ禍前の不動産マーケットでした。しかし、コロナ禍で不動産の価値が適正化されて、本来の価値通りに取引が行われるようになりました。そういう意味でいえば、コロナ禍になって不動産という商売そのものが原点に帰ったような気はします」
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「中途半端なものは売れない」不景気時のセオリー
取材を終えて思ったことは、消費も不動産も二極化が進んでいるという現実だった。
たとえば、外出が減って靴は売れなくなっているが、外出そのものが特別な日になった今、1万円以上の高額なスニーカーは好調に売れている。スーパーでは安いもやしと袋麺が売れる一方、高級スーパーでは高額な肉やフルーツを買い求める人が増えている。
不動産も同じで、付加価値の高い物件には買い手が集まり、価値の低い物件には値もつかない。「中途半端なものは売れない」というのは、景気が低迷した際に必ず起きる消費の流れであり、コロナ禍でその流れが加速したのが、今の不動産業界の現状と言える。
今後、一等地にはその時流に合った業種や体力のある企業が入り、それ以外の価値の低い物件には、適正価格に相応の業種が入り込むようになると思われる。安い物件でもビジネスが成立するような業種が街の空きテナントに次々に入ることになれば、アフターコロナの世界では、生活様式だけではなく、街の景色も大きく変わってしまうかもしれない。