ヤマハ発動機は1月21日、「SR400」の国内向け生産を終了すると発表した。
日本の普通二輪免許で乗れるバイクとして40年以上売れてきた、ヤマハ発動機の代名詞的存在。まさに日本のものづくりを象徴するようなバイクについて、バイク誌「RIDERS CLUB」の元編集長であり、SRを18歳から乗り続けてきた「RIDE HI」編集長の小川勤氏が寄稿した。
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いつかこんな日が来るんじゃないか……。1978年から生産を続けていたヤマハSRが2021年をもって生産終了となる。18歳から46歳の現在までSRに乗り続け、何台も購入してきた僕としてはやはり寂しい。現在は1978年の初期型のSR500と2010年型のSR400の2台を所有し、カスタム、ツーリング、レース、そのすべてをSRと過ごしてきた。
SR400とは、普通二輪免許で乗れる400ccのバイクとして1978年に発売されたバイクで、兄弟車であるSR500(1999年に生産終了した500ccバイク)も含めると累計販売台数は12万台以上。まさに日本を代表するバイクである。
少しバイクに興味のある方であれば「昔乗っていた」「友人が乗っていた」……と、どの世代の方にとってもどこかで見たことがある日本のバイク。それがSRだ。
どうして40年以上もの長い間愛され続けたのか。理由は“変わらなかったこと”。今となっては、これに尽きる。
1978年は、サザンオールスターズが「勝手にシンドバッド」でデビューし、ピンク・レディーがヒットを飛ばし、キャンディーズが普通の女の子に戻り、王貞治が800号ホームランをかっ飛ばし、映画「スター・ウォーズ」が初めて公開された年だ。
リアルタイム(もちろん僕も)でない方が大半かもしれない……。でも、SRはこの頃から熟成はしているが、大きな構成は何も変わっていない。
修行とも呼ばれたエンジン始動
1978年から基本設計が40年以上ほとんど変わっていないバイクであるため、21世紀のいまとなってみれば非常に特徴的な仕様が多い。
たとえば、おそらく読者の多くの方は、「車やバイクのエンジンを始動する」のに苦労したことがある人はいないと思う。「キュルキュル」という音と共にセルモーターがかかり、「スイッチひとつでエンジンはかかるものだ」と思っている人も少なくないはずだ。
でも、SRはそもそもセルモーターがついていないから、その「スイッチ」がない。モーターの代わりにライダー自身がキックを踏んでピストンを物理的に自分で動かさないとエンジンがかからないし、そのキックもタイミングよく踏まないとかからない。