コロナ禍で今年はバレンタインも縮小気味だった。特に小学生や中学生の女の子たちが友達に配るチョコレート菓子を控えているので、ママ達からは「手伝わなくていいから助かった」という声も聞こえてきた。
一方で、100円ショップのバレンタインに向けた製菓コーナーは、品数も売り場の広さも例年並みで、女の子たちのお菓子作りの情熱への期待度は大きいことが分かる。
このお菓子作りへの熱は将来への夢にもつながっている。人工皮革のメーカー、クラレが行った小学生2000人に対する調査によると、2000年と2020年、共に女子の「なりたい職業」の1位は「ケーキ屋さん・パン屋さん」だ。2000年のデータでは24.5%がそう答えている。男子でも同年8位で「ケーキ屋さん・パン屋さん」が入ってくるが、わずか4.4%で少数派といえよう。
それでも、なぜパティシエは男性ばかり?
しかし、今、メディアに登場する有名パティシエも、街のケーキ店で看板となるシェフも男性ばかりだ。例えば食べログの「東京 ケーキ 人気ランキングTOP20」(2021年2月1日更新)の20店のうち、シェフを女性が務める店はわずか3店だ。
つまり、20年前に「ケーキ屋さんになりたい」と願っていた4.4%の小学生男子の中から実際に夢を叶える人たちはいた。一方で、どうして、24.5%もいた女子の多くにはそれができなかったのだろうか。
東京製菓学校の公式サイトによると、学生の男女比は「3:7」だそうだ。つまり、パティシエを希望し、専門学校に通うのも圧倒的に女子が多い。また、パティシエは、手先の器用さや創作的なセンスが求められるから、女性に向いているように思える。また、スイーツの企業バイヤーやジャーナリストは女性がメインとなって大活躍している。それでも有名パティシエが男性ばかりというのは、女性の社会進出が進んだ現在、とても不思議なことだ。
今回の記事では、女性のパティシエが増えない理由とそれに対する解決策を取材し、探ってみた。
ケーキ作りは超重労働
去年、バレンタイン商戦を取材していた時に、大手企業のスイーツ事業の担当者がこう話した。
「パティシエは毎日の作業が大量にある重労働。女性には体力的にキツいから続けられないんですよ」
ケーキを作るのは実に手間がかかる。スポンジを焼き上げ、クリームや砂糖菓子、フルーツなど素材を乗せていく。しかも芸術品のように美しく仕上げていく。それをパティシエは何種類も作るのだ。