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『Hanako』(マガジンハウス)などの雑誌でスイーツ記事を多く手がけるスイーツライターのchicoさんはいう。

「出産後に自分の店をオープンするのはハードルが高いかもしれませんね。ただ、店をオープンさせてから出産された場合、工夫して店を続ける女性シェフたちはいらっしゃいます」

 では、出産後もシェフパティシエとして仕事を続ける女性はどのようにしているのだろうか。

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焼き菓子やチョコは女性職人と相性がいい

 兵庫県芦屋の人気店「ポッシュ・ドゥ・レーヴ芦屋」のオーナーシェフの伊東福子さんは、3年前に第1子を出産してからは、子育てとの両立を図る為、生菓子(生ケーキなど)の販売は金土日のみにし、他の日は焼き菓子を販売している。「焼き菓子の売上比率を高めることを意識しています」(同店の代表取締役、伊東巌さん)。

 伊東シェフはコンクールの焼き菓子部門で受賞経験もあり、焼き菓子に力を入れている。焼き菓子は生地をまとめて作って冷凍保存する店も多いが、伊東シェフはその都度生地を作って焼き、フレッシュな商品を店に出す。それでも焼き菓子は賞味期限が比較的長い。この店の焼き菓子は最長で2週間の賞味期限がある。

©iStock.com

 生ケーキのように作った日しか店に置けないこともないから、パティシエの体力的な負担は少なくなる。賞味期限が比較的長いという点ではチョコレートも同様で、昨今、注目されるチョコレート職人、ショコラティエは女性と相性がいいという話も耳にした。

 本当なのかと、chicoさんに訊くとこう返ってきた。「ショコラティエも現状は多くは男性です。ただ、生ケーキと違って、チョコレート菓子は作った日のみが賞味期限ではないものも多いです。そういう意味では作り手の体力的な負担は少ないですし、実際、日本人女性のショコラティエで活躍している方々もいます」

 生ケーキ以外の焼き菓子やチョコレート菓子などの比較的賞味期限が長いものを手がけていくようにすることが、女性の菓子職人が長く活躍できる方法の一つなのかもしれない。

あえてクリスマスシーズンは休む店も

 chicoさんはこうも話す。

「ケーキ業界でも働き方改革が始まっています。あえてクリスマスシーズンは休むお店も出てきています」

 事実、今、関東の住宅街などでは休みが多いケーキ店が増えている。東京の西東京市にある人気店は、月の3分の1が休業日だ。地元の人たちに味を認められれば、「開いている日に買いに行けばいい」と思ってもらえる。SNSで営業日を公開すれば、客も店のスケジュールを簡単に確認できる。

©iStock.com

 スイーツ業界も働き方改革をしていくことで、今後は女性のパティシエだけでなく、男性も仕事がしやすくなるだろう。脱ブラックな経営を目指すことは、若手パティシエ全体を育てることにもつながっていく。コロナ禍の中、企業の多くが在宅勤務に切り替え、子育て中の従業員たちも働きやすい環境になってきた。長時間労働ができる人材が重用される時代から、質の高い仕事をする人材が評価される時代へ変わってきた。パティシエたちも働き方を工夫することで、さらにスイーツ業界は進化するのではないか。