連携プレーの吉本芸人、潰し合いのサンミュージック芸人
――良いところはどういうところですか。
鳥居 いいところは自分の個性を消そうとしないで、そこを伸ばそうとしてくれるところですね。
――悪いところは?
鳥居 ダメ出ししてくれないところ。サンミュージックの芸人って、なんかわけわからないジャンルばかりじゃないですか。私一回もダメ出しされたことなくて、それじゃ伸びないよと思う。
あと交通費が出ない。この仕事とこの仕事の間、絶対タクシーで行かなきゃいけないという時も交通費が出ない。あと最近Wi-Fiがついたけど3階とか1階になるともう届かない。2階しか届かない。稽古場に防音がないから、夜練習できない(笑)。
でもね、ほんとあったかいですよ。ほんとファミリー感があって。でも家族だったら交通費ちょっと出してよとか思う(笑)。
――同じ事務所同士でエピソードトークが盛り上がりそうですね(笑)。
鳥居 うん。ただね、横のつながりそんなないですよ、サンミュージック。吉本さんだったら、こう振ったら誰かがこう答えて……みたいなのがあるけど、サンミュージックはみんながみんな「ハイ、ハイ、ハイ、ハイ」って前に出てきて、それぞれをつぶそうとかかってくる。
――ひな壇向きじゃない。
鳥居 全然です全然。ひな壇の“一枠向き”なんですよ。でも声デカいから後ろに座らされる。ピン芸人が多いから、目立ちたいんです。コンビでもピン立ちしてる人が多い。
――先輩後輩とか、横の繋がりみたいなものがない。
鳥居 そういうの私も嫌ですし。前に(カンニング)竹山さんから「お前今どこにいる。飯行くぞ」ってLINEきたんですけど「今ちょっと喫茶店でボーッとしてて忙しいです」って返したら「りょうか~い」ってきました。いいんだこれで、と思った(笑)。
――すごくいい事務所ですね。
鳥居 裏を返せば、人に興味がない人たちが集まっているんですよ。自分にしか興味がないナルシストばっかり。エゴのかたまりしかない(笑)。ああごめんなさいね、私ばっかりしゃべっちゃってごめんなさい。
――いえ、ありがたいことです。
鳥居 だめです。これはほんと反省しなきゃいけない。ずっと変わらないんですよ、昔からこういうところが。「人の話はちゃんと耳を傾けなさい」ってね、この間親に言われたの。
運転席に行くぞと思いながら、補助席で腰掛けている感じ
――他の世界だったら変わった人扱いされてしまうかもしれないけど、ここだと変わってることがよしとされるのは、すごくいい。
鳥居 居場所を見つけたのかもしれない。居場所といってもほんとの居場所とは思ってないんですけど。バスで言ったら補助席みたいなもんですけど。
――真ん中の、折りたたみの。
鳥居 なんかあったらすぐどっか行けるような。でもとりあえずは今一番落ち着くのはここだから、居場所は居場所ですね。でも私、本当は運転席に座りたいんですよね。
――演出家ですもんね。
鳥居 そう。最終的に運転席に行くぞって思いながら、とりあえず深く腰掛けず補助席にいるという感じですね。運転手に何かあったら私がハンドルをいつでも持てるように準備を。
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写真=榎本麻美/文藝春秋
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