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“言質”をとる重要性

 昔っから「借金の取り立て」といえば怖いイメージがあるように、回収は長い間、この人を操る三つの感情の中でも特に「恐怖心」を煽って行われていた。

 ただ、法律が変わり、お客さまに強く言うと罰せられてしまう昨今、お客さまの「恐怖心」を過度に刺激することは禁止されている。

 もしも今、あえて恐怖心を刺激しようとするなら、

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「長期に延滞するとカードが使えなくなります、お客さまはまだお若いんですから、この先お金が借りられなくなりますよ~」

 と言って「将来必要な時にお金が借りられなくなる」という恐怖を刺激するといった方法くらいなものである。

 また、コールセンターにはお客さまの「義務感」を刺激するのが上手な先輩もいる。そもそも私たちはお客さまが使った代金を立て替えているのでお客さまには支払いの義務がある。

「お客さまが使ったものなので、お支払いを頂かないと困ります」

 と正攻法で攻める。ただこの方法は下手すると「そんなことわかってんだよ!」と反発される可能性が大きいので、「義務感」を煽るのはそうとう年配の社員や威厳のある人がやらないと難しい。

 そして三つ目の「罪悪感」、そう、私のように気弱でヘタレで相手に物事を強く言えない人間が狙うのは、もうこの感情しかない。

 一度入金の約束をしたにもかかわらず、その約束を守ってもらえなかったお客さまには、

「お客さまが×日にご入金してくださると言うからお待ちしてたんですよ……」

 こう訴えることで罪悪感を刺激するしかないのだ!

©iStock.com

 だから、約束を破られてしまった時のために、入金日と入金根拠はぜひお客さまの口から言ってもらう必要がある。

 これは督促だけでなく、しょっちゅう遅刻したり仕事の締め切りを守らない相手にも有効だ。待ち合わせ時間や締め切りを相手の口から言ってもらえば、「日時はあなたが決めたんじゃないですか~」と相手の罪悪感を刺激できる。

「言質を取る」という言葉がある。質には人質や抵当という意味があるらしい。そう思うとなかなか恐ろしい響きを持つ言葉だけど、約束は相手の口から言わせることで、よりいっそうその責任を重くすることができる。人と約束をする場合は、日時と場所を相手の口から言ってもらうことが重要なのだ。