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とにかく入金してもらう

 ただ、お客さまも延滞しているだけあって中にはお金がない人も多い。入金日を聞いても「いつ返せるかわからないなあ」と返してくることもままある。こういう場合は、期日がダメなら金額を聞いてみる。

「じゃあ、いくらでしたらお支払いいただけますか?」

 そこで返ってきた額が1000円でも500円でも、とにかく入金してもらう。

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 本当はお金はあるけれど「めんどくさい」とか「支払いたくない」とか思って入金をしないお客さまもたくさんいる。たとえ一部でも入金してもらえれば「この際、残りもきれいにするか」という心理が働くのか、その後の入金率も高まる。

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「お金を返して」と言うのではなく「何日に払える?」と尋ねる。日にちがわからないと言われたら「いくらだったら払える?」と質問を変えてみる。これで、相手との雰囲気を悪くすることなく入金の催促をすることができる。

「督促の仕事も役に立つじゃん」

 私の友人に仲間内の飲み会の幹事を引き受けてくれる優しい女の子がいる。彼女はいつもお会計を引き受けているのだが、中には酔ってそのままお金を払わずに帰ってしまう人たちがいて、後日「飲み代を払ってほしい」と言い出せず自腹を切ってしまうこともあったそうだ。そこでこの2つの方法を伝えたところ、ずっと楽に連絡できるようになり、今では100%回収しているらしい。

「なんだ督促の仕事も役に立つじゃん」

 と私はその時、ちょっとだけ嬉しかった。

【後編を読む】

督促OL 修行日記 (文春文庫)

榎本まみ

文藝春秋

2015年3月10日 発売

◆『督促OL修行日記』を1回目から読む。