でも、うまくいかないものはうまくいかないし、もしそういう目標を実現できたとしても、自分がつらい思いをしているようでは意味がないといつしか気づいたんですよね。
芸能界の王道で活躍できている人は、つまり適性があったということでしょう。その人にとっては、最も華やかな場でスポットライトを浴びるのが楽しいだろうし、そこへ向けてむりなく努力できるんですよ、きっと。
僕はといえば、違う方向でがんばっていきたいと、自然に考えるようになっていった。「ゴールデンタイムの番組MC」という成功モデルに囚われ過ぎなくてもいいや、と途中から思えたということです。
僕はとことん「競わない」というポジションが楽
――競争から降りると、「あいつは負けた」と思われそうで、悔しくはないですか?
ないです、ないです。僕から見て、すごいなと思う人は素直にすごいなと思うし、敵わないなと思ってしまう。お笑いの世界だったらいま、EXITのふたりの勢いがすごいじゃないですか。彼らと「チャラ男」キャラで競おうとしたって、ぜんぜん敵わないですしね。僕がひと昔前にやっていたのとは別のかたちで、チャラいキャラの新たなスタンダードを彼らがしっかりと打ち立てている。それに対抗しようとは思わないです。
僕はとことん「競わない」というポジションが楽なんです。
「あっちゃん、カッコいぃ~」のネタを書いたのはあっちゃん
――いま後輩芸人のEXITにしたように、相手をさらりと褒めてしまえるところは、ひとつの特質ですね。
僕は平気でそういうこと言っちゃいますね。たしかにお笑いの人って、他の芸人をむやみに褒めないところがある(笑)。そういう人はやっぱり自分にちゃんと自信があるんでしょうね。「いやいや、言ってもオレのほうが上だし」と。
それはそれでカッコいいと思いますよ。うちの相方もそういうタイプですしね。だから僕にデビュー当時から言わせてたんでしょう? 武勇伝ネタで「あっちゃん、カッコいぃ~」って。その決め台詞、僕は何万回叫んできたかわかりませんけど、あのネタをつくって台詞書いたのはあっちゃんですからね。自分で自分を褒めさせ続けてきたという(笑)。
ひょっとすると僕は、知らずあっちゃんに洗脳されてきたのかもしれない。来る日も来る日も「カッコいぃ~」と言わされて、そういうのが自分の血となり肉となって、僕の人生が変わっていった可能性はありますね。