文春オンライン

2021/02/26

急発進し300メートル暴走

 事故を簡単に振り返っておこう。

 判決や石川側の説明によると、検察時代の部下だった弁護士ら4人と千葉県でゴルフをする予定だった石川は、2018年2月18日朝、メンバーの女性を拾うため、東京都渋谷区内の道路わきに運転していたトヨタの高級車レクサスLS500hを停車した。車は自動的にパーキングブレーキがかかった。

※写真はイメージ ©️iStock.com

 まもなく女性が現れたため、石川は車の後部トランクへの荷物の搬入を手助けしようと、トランクを開け、シートベルトを外してドアを開けて右足から外に出ようとしたところ、車が動き出し、どんどん加速。最終的に100キロを超す猛スピードで突っ走った。

 石川によると、右足をドアに挟まれた状態で、ハンドルにしがみつき、暴走を止めるため、左手をハンドルから離し、パーキングレバーを操作しようとしたが、うまくいかず、反対車線の右側歩道を超えたところで意識がなくなったという。

 車は、反対側の歩道にいた堀内貴之さんをはねて死亡させ、店舗に突っ込んだ。車の暴走距離は約320メートルに及んだ。車は大破し、石川は右足甲を骨折し救急車で港区内の病院に搬送された。警視庁が事故車を検証した結果、ブレーキコイルが焼け、部品がすり減っていた。

「足は宙に浮いていた」記憶にこだわった石川

 石川は事故当時78歳。警視庁は、事故車に搭載されていたEDRの解析結果や、アクセルペダルの裏についた圧痕などから、石川が、車から降りようとした際、誤ってアクセルペダルを踏み込んで自車を急発進させ、その後も、ブレーキと勘違いしてアクセルペダルを踏み続けた、と見立てた。

※写真はイメージ ©️iStock.com

 石川が警視庁の見立てを受け入れれば、よくある、高齢者の踏み間違い事故として粛々と処理され、世間の注目も集まらずに終わっていただろう。しかし、石川には、車が発進した際、アクセルペダルを踏んだ記憶がなかった。踏み続けた記憶もなかった。自由な左足は宙に浮いたままだった感覚が残っていた。アクセルペダルを踏んでいないとすれば、車が何らかの不具合で勝手に動き出したことになり、自分に暴走の責任はないのではないか、と考えた。

 石川は警視庁の捜査員に「アクセルペダルを踏み込んだ記憶がない」と訴えたが、警視庁側は、「衝突4・6秒前から衝突時まで、常にアクセル開度が100%(アクセルペダルを最大限踏み込んだ状態)を記録している」とするEDRの解析記録やアクセルペダル裏の圧痕の存在を石川に示し、石川から「自由になる左足でアクセルペダルを踏んだ記憶はまったくないが、踏んだかもしれない」との供述調書をとり、事件を18年12月21日、東京地検に送致した。