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「申し訳ございません」で逆上!? クレーム対応スタッフが身につけた“正しい謝り方”とは

『督促OL 修行日記』より #18

2021/03/07

source : 文春文庫

genre : エンタメ, 読書, 社会, 働き方

note

電話でパニックにならないように…

「私、クレームとかでお客さまに怒鳴られると、とっさに言葉が出てこなくて、何も言えなくなっちゃうんです。だから、そういう時はこの付箋を読むことに集中するようにしているんです」

 なるほど、怒鳴られた時に真っ白になってしまうのは私もすごくよくわかる。

 そこでオペレーターさんは工夫して、怒鳴られてショックを受けてしまった時は付箋に集中してそこに書いてある言葉を読み、パニックになっていることをお客さまに気取られずに、冷静を装って対応することができるようにしていた。

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 実はこの付箋、コールセンターには使っている人が結構多い。クレーム対応チームに所属しているベテランのE田さんも、パソコン周りに沢山付箋を貼っている一人だった。

 でもE田さんはベテランだし、見た目で判断するわけじゃないけれどコワモテでいかつい男性なので決してお客さまに怒鳴られて何も言えなくなってしまうようなタイプには見えない。

 気になってまたまた尋ねてみると、E田さんが付箋を貼っている理由はオペレーターのU野さんとはまた少し違っていた。

呪文を唱えるかのように……

「俺は気が短くて、お客さんに悪口を言われるとついカッとなってケンカ腰になってしまうんだ。だから冷静になるために頭に血が上った時に付箋を読むようにしている」

 な、なるほど……、びびって何も言えなくなる私とは真逆だけれど、こういった使い方もあるんだなぁ。

©iStock.com

 付箋に書かれている言葉は、いわば「呪文」だ。

 頭が真っ白になった時に唱えることで自分をショックから回復させてくれる、あるいは冷静にさせてくれる呪文。

 まず、お客さまに「こう言われたらこう返す」と想定していくつかセリフを用意しておく。それを付箋やカードに書いて、自分が電話をするオペレーターブースに座ったら目に見えるところに用意して置いておく。

 そしてお客さまにいきなり怒鳴られたら、すぐにこの付箋の呪文を読む。付箋に書かれている言葉を読むことだけに集中すれば、呪文を唱えている間はクレームでお客さまから浴びせられる罵詈雑言を一時的にシャットアウトすることができる。その隙に態勢を立て直してクレームの対処方法を練ることができるのだ。