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ES細胞やiPS細胞を超える!? 再生医療のホープ「ミューズ細胞」は何が凄いのか

2021/03/02

 心筋梗塞で心臓が弱まった人が拍動を取り戻し、脳梗塞で麻痺や認知などの障害を負った人が健常の生活を取り戻す――。特効薬がなかったこうした疾患を快復させるかもしれない画期的な製剤が今、開発されつつある。「Muse(ミューズ)細胞」というヒトの細胞からつくられる製剤で、早ければ2022年度に製造販売が承認される見込みだ。この細胞の発見者である東北大学大学院・出澤真理教授は、「ミューズ細胞のもたらす医療革命は大きいものになる」と展望を語る。

 ミューズ細胞は、さまざまな細胞に分化する幹細胞の一種で、誰の体にも存在する自然の細胞だ。だが、出澤教授が2007年に発見するまで、その存在は知られていなかった。

「小さな怪我であれば、自然と治るのは誰でも経験していますよね。そういった修復は当たり前のように思いますが、どうやってなされているのか、はっきりした答えはわかっていませんでした。ですが、研究の結果、ミューズ細胞がその仕事をしている細胞だとわかったのです」(出澤教授)

出澤研究室

「点滴するだけ」というシンプルさ

 脳梗塞や心筋梗塞といった重大な疾患の時には、元から体内にあるミューズ細胞の数だけでは修復には足りない。そこで、ミューズ細胞の製剤で賄うことになる。外から投与し、傷害を修復できるだけの数を補充するのだ。

 ミューズ細胞の製剤は、どの疾患でも、仕様や基本的な治療法が変わらない。現在行われている治験では、ドナーから採取し、培養して数を増やしたミューズ細胞製剤15ml(約1500万個の細胞を収蔵)を希釈して52mlにしたものを、点滴(静脈注射)で15分ほどかけて投与するだけ。体内に入ったミューズ細胞は血液の流れに乗って、損傷した臓器や組織に自動的に集まり、その修復を始める。

 どんな疾患も「点滴するだけ」という極めてシンプルな治療が実現するのは、ミューズ細胞が再生医療への実用化に有利な「四つの特性」を備えているからだ。