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人工子宮での妊娠、出産はすでに起こっている……遺伝工学研究者が「大学は役に立たない」に反論する理由

最新の科学技術研究は、最高のエンターテイメントだ

 未来 というと何を思い浮かべるだろうか?

 人によって、『ドラえもん』のヒミツ道具があふれる世界だったり、シリーズ最新作として近日公開予定の『シン・エヴァンゲリオン』のような荒廃した世界で人型決戦兵器が駆け回る世界だったりを思い浮かべるのかもしれない。綾波レイがガラス張りの液体が満たされた機械のなかでぷかぷかと浮いているシーンを見て、人工的な機械のなかでクローンなどの人体が育つ世界に未来を見出した人も少なくないはずだ。

 そのクローンという言葉を作ったとされる生物学者のホールデン(J. B. S. Haldane)は、現代の漫画やアニメ、小説に出てくるようないわゆる「人工子宮」を用いたヒトの体外発生技術が2074年までに普及すると、1924年に発表された著書『ダイダロス あるいは科学と未来』のなかで想像している。

 2074年というとあと50年かそこらしかないのだが、今回はそのようなテクノロジーがどの程度進んでいるかを紹介しようと思う。

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人工子宮技術は2種類あり、それぞれで最近大きなブレークスルーがあった

 人工的に子宮あるはそれに類似する構造を作りだし、動物の胎児を育てるための人工子宮技術(artificial womb)には大きくわけて2つの技術が存在する。

 一つは、胎児を母親の身体とは別の人工の容器に入れ、栄養と酸素を送り、不要な物質を取り除きながら、体外で育てる技術で、子宮外環境システムとも呼ばれている。この技術は、通常生存率が著しく低い妊娠23週よりも早くに出産した超早産の新生児を救うための技術として研究開発が進められている。

 2017年にフィラデルフィア小児病院研究所のPartridgeらは、バイオバッグ(Biobag)と呼ばれるプラスチック容器に無菌的な人工羊水を充填させ、その中にヒトの妊娠23週齢に相当する日齢の羊の胎児を置き、4週間体外培養した後で、自発呼吸できる子羊が「出産」されたことを報告している(参考文献1)。

 人工の羊膜、羊水、胎盤を用意して、羊の胎児を体外で4週間培養、成長させることに成功した……と要約するとわかりやすいかもしれない。

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 この子宮外環境システム・EXTEND(EXTra‐uterine Environment for Neonatal Development)は、閉鎖系での人工羊水の循環の他に、心臓や血管などへのダメージを防ぐために、ポンプを使用しないガス交換システムが特徴となっており、彼ら以外にもいくつかの研究機関で実施され、その効果が確かめられている(参考文献2、3)。