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ブルース・リーからもヒントを得た!?

 番組の基礎を築いた初代プロデューサーの逸見と二代目プロデューサー西村俊一(二人とも95年に逝去している)は、エンターテインメント性を徹底的に追求するとともに、視聴率にも強いこだわりを見せていた。第8部から第14部までアシスタントプロデューサーを務め、いったん番組から離れたものの第28部で復帰、九代目プロデューサーに就いたC・A・Lの藤田知久がこう語る。

「逸見さんは、(松下退社後に構えた)事務所の近くにある店で古今東西のビデオ、LD(レーザーディスク)を買ってきては、のべつまくなしに見ているんです。少しでも『水戸黄門』に生かせるヒント、アイデアがないかというわけです。西村さんもブルース・リー主演の映画や長編マンガのビデオをよく見ていました」

 西村は視聴率とその分析を非常に重視したという。視聴率調査の結果が出る朝、西村は「今回はいくらだった」と外から電話してくる。30%台なら「まあまあ」、20%台の数字が出ると「どうしてだ」。年代別の視聴率獲得目標も設定していた。

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©iStock.com

「裏番組の視聴率が載っている資料に、毎回私なりの分析を書くんです。内容は他局の編成、その回のストーリー展開や演出の仕方などです。西村さんは毎シリーズの構成、レギュラー陣の役割と配置など、緻密な計算をした上で全体を統括していましたね」

 と藤田は振り返る。シリーズの構成を受け、毎回の脚本作りが行われる。プロデューサーや監督、スタッフが舞台となる現地で取材し、綿密な調査をし、膨大な資料を集めてくる。そしてディスカッションが重ねられ、脚本が完成する。その脚本をもとに演出していくわけだが、16年間の助監督を経て第16部(86年)で監督デビューした矢田清巳はこう話した。

「作る側からすればマンネリはあり得ません。確かに同じようなカットはよく撮りますし、同じようなストーリー展開ばかりに見えるでしょう。でも私たちは台本に命を吹き込む仕事をしているんです。小道具や食べ物一つにしても、事実に基づいて再現するようにしています。あたかもそこにあるような人生を紡ぎ出すのが、私たち現場の仕事なんです。毎回毎回新しい発見がありますし、生み出される命も微妙に違います」

高視聴率維持の秘訣

 チーフプロデューサー中尾幸男は、電通からC・A・Lに出向中。30%から40%が当たり前の時期があったゆえの通算平均視聴率24%台なわけだが、第33部以降は原点に帰りたいとこう語っている。

「今の時代、ファミリー視聴がどの程度あるのか分かりませんが、どの年代にも『入り口』のある、老若男女誰もが共感できる番組にしたいと思っています。第33部は時代劇でホームドラマという原点に戻っていくようなシリーズになります」

 第33部のキャッチフレーズは、「記録を超えて記憶に残る旅へ」。番組スタート当初のことを知らない視聴者をどう取り込むのか、それが高視聴率維持、さらなる長寿につながることになろう。