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2021/03/04

source : 文春新書

genre : エンタメ, テレビ・ラジオ, 読書

嘘・偽りのない審査方法

 次に、審査方法に嘘・偽りがないことだ。本人たちは自分たちのネタに満足していても、ボールが1個しか入らなかったりする。不合格になった演者には、どこがダメだったのかを話し、時に食事に連れ出しているという。並木がこう語る。

「『1個だから下手なのではない。もっとうまくなってまた出場しろよ』と思わず声をかけたくなりますね。制作スタッフには、受かった奴よりも落ちた連中をしっかりフォローするように言っています。何回となく受け続けてようやく合格したケースなど、正直ホッとしますね。昨日、今日結成したばかりのグループと10年くらいコンビを組んでいる演者が対戦し、“昨日、今日組”が勝ったりすると、割り切っているつもりでも気になります」。

 そして、番組出場をめざす演者が引きもきらないことである。「東京だから受けないんだ」という演者のために大阪で収録したり、名古屋、札幌などの政令指定都市のホールを借りて制作している。広島では、出演者と審査員合わせて400名の定員に、1万通の応募があった。

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 福岡には九州全域から集まったというから凄い。地方で収録すると、東京とは違った盛り上がり方がある、と並木は話す。

「ただ、東京で受けない演者は主要都市でも受けません。高校生や大学生の子を持つ母親から、『子どもが芸人になりたいと言っているのですが、どうすればいいでしょうか』といった手紙が届くこともあるんですよ。とりあえず卒業することが大事です、と返答していますが(笑)。番組に出て合格する、チャンピオン大会に出場する、といった目標を持っている若手お笑いタレントがいる以上、やめるわけにいきません」

「NHKらしい番組を作ればいいんだ」

 1950年、書店街で知られる東京・神保町に生まれた並木は、明治学院大学経済学部を卒業後NHKに入局した。仙台放送局、青森放送局を経て81年東京芸能部に異動。鈴木健二が司会を務めた『クイズ面白ゼミナール』のADからスタートし、同番組や『クイズ百点満点』『加山雄三ショー』のディレクターなどを務めた。2001年と02年の『紅白歌合戦』では制作上のトップであるCP(チーフプロデューサー)を務めた経験をもつ並木は、自局の若手制作者にこう釘を刺すことがあるという。

「みなさん『オンエアバトル』を“NHKらしくない番組”だと評するからか、ウチの若手が『NHKらしくない番組を作りたい』と言うんですよ。だけど私は、『NHKらしい番組を作ればいいんだ』と強調しています。カネのかけ方、ギャラの払い方など、NHKは民放に勝てません。知恵を出すことが大事なのです。若手制作者には、『オンエアバトル』から生まれたタレントを使い、新しいテイストの違ったスタイルの番組を考えてみろ、と言っています」

 民放と同じ発想では民放には勝てないというわけだ。お笑い芸人が使い捨てにならないように、その受け皿になるような番組を企画したいと並木は考えている。