関空は民間会社の形をとっているとはいえ、政府が大株主であり、旧運輸省が所管している。事実上、国の管理下にある。その一期工事では、当然のごとく天下り社長の竹内が工事を差配しようとする。そこで、平島と衝突した。
政治家を“利用”して大物官僚を撃退
「一期工事は、関空の竹内社長がみずから取り仕切る、とまさしく意気込んでいました。ふつうなら平島さんといえども、建設会社は所管官庁には逆らえない。課長クラスでもゼネコンの重役たちが日参し、接待しなければならないほどです。竹内さんはそこから天下ってきた大物官僚ですから、通常なら言いなりでしょう。しかし、平島さんは違った。役人は政治家に弱い。平島さんはそれをよく知っていて、うまく利用する人でした」
別の中堅ゼネコンの元談合担当者が振り返る。平島は、元自民党副総裁の金丸信や元外相の安倍晋太郎とすこぶる親しかった。
「このときの平島さんは、運輸行政に強い安倍さんを頼った。安倍さんが率いる自民党の清和会は、歴代の運輸大臣を輩出してきた大きな派閥です。その領袖と運輸省の元港湾局長では、格が違う。安倍事務所を通じて、地元の工事業者事情を分かっているのは平島だから任せろ、と竹内社長を説得してもらったらしい。それで、平島さんが工事を牛耳るようになったのです」
関空建設工事着工の翌88年1月、大物天下り官僚を撃退した平島が、関西の天皇の名前を各界に轟かせた出来事があった。それが、平島の長男の結婚披露宴である。招待客800人という盛大な宴で、仲人は元運輸大臣の山下徳夫、後見人として金丸信のメッセージも届いた。
「最盛期の平島さんは、近畿二府四県の知事とホットラインをもち、電話でどこに工事を落札させるか、話をつけられるほどでした。その代わり、知事の選挙になると、カネを用意するし、票も集める。持ちつ持たれつでした。中央政界の金丸や安倍との太いパイプを使い、中央官庁、地方自治体問わず、彼の名前が轟いた。関西の土木工事では右に出るものがありませんでした」
長男を安倍の秘書にして政界へ
中堅ゼネコンの談合担当者が、そう記憶をたどる。そして、きらびやかな結婚披露宴の主役だった長男は、安倍晋太郎の秘書を務めるようになり、政界に進出しようとする。
「最初、平島さんは長男を大阪府議会議員に立候補させると言っていました。ところが、たまたま衆議院で自民党の欠員が出た。それで急きょ、衆院選に出馬させると言い出したのです。準大手や中堅ゼネコンはもちろん、下請け業者や孫請け業者にいたるまで片っぱしから声をかけ、息子の選挙を手伝わせようとした。さすがにそれで顰蹙を買いましたね」