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 今後、あらゆる部品を内製化して自社で品質力を高めると同時に一気にコストダウンを図るのが日本電産の戦略だが、課題として浮上したのがギア製造だった。三菱重工工作機械は、自動車用の変速機や減速機といった歯車の分野で高い製造ノウハウを持っている。それだけでなく米国や中国、インドにも事業拠点を保有しており、それらも同時に買収することで、グローバルにギア内製を強化していくことも可能となる。

セルビアに「日本電産村」を作る

 こうしたM&Aに加え、日本電産はコロナ禍の中にあっても将来に向けての設備投資を拡大させている。いま、バルカン半島にあるセルビアで「トラクションモーター」の新工場を建設する準備を進めているのだ。2022年から生産を開始して2025年までに100万基を生産する計画で、総投資額は約2000億円と見られる。

 セルビアではトラクションモーター以外にもパワーステアリングや家電向けモーターなども生産し、関連企業を新工場周辺に集めて欧州での「日本電産村」を構築する考えだ。欧州でEVシフトが加速すると見て、先回りして主要部品の生産を立ち上げておく狙いがある。すでに同社は仏プジョーともフランス国内で合弁生産を始めることを決めている。

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日本電産社長の関潤氏(筆者撮影)

 日本電産の成長戦略を担う関氏は、日産専務として中国合弁会社の東風汽車総裁を務めていたこともある。日本電産への転職が決まったのは、副COOに就任してからわずか1カ月後のこと。まさに電撃的転職だった。これは日産の社長候補とみられていた関氏を、豊臣秀吉のように「人たらし」で知られる永守氏が口説き落としたのだ。

 長崎県佐世保市に生まれ、子どもの頃、父が病弱で裕福な家庭ではなかった関氏は、授業料のかからない防衛大学校に進学した異色の経営者でもある。

出典:「文藝春秋」3月号

 筆者は、「文藝春秋」3月号及び「文藝春秋 電子版」に掲載した「日本電産社長 EVの覇権を狙う」で、関氏へのロングインタビューを行った。日産から日本電産に転職する際の永守氏の「口説き文句」や、脱炭素社会におけるEVを中心とした車載事業の戦略に加え、強烈なリーダーシップで知られる永守会長との役割分担などについて詳しく書いた。

文藝春秋

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日本電産社長「EVの覇権を狙う」