テレビドラマや映画に引っ張りだこの高橋一生さんが、野田秀樹さんの舞台に出演することになった。高橋さんは舞台出演歴も長く、これまで、故・蜷川幸雄さんや白井晃さんなど、優れた演出家と仕事をし、坂元裕二さんの朗読劇にも参加している。野田さんからも何度かオファーを受けており、ようやく出演が実現した。
気になる舞台のタイトルは「フェイクスピア」。フェイク+シェイクスピア? 「フェイク」にあふれる現代らしいタイトルだ。
ネットニュースに日夜、流れていくニュースのなかから真実とフェイクを見極める知見が我々には求められている。たとえば、コロナ禍で不要不急と思われているものはほんとうにそうなのか。俳優のアドリブとは何なのか。シェイクスピア劇はほんとうに人気なのか。
正解がよくわからないことについて、野田さんと高橋さんはどう思っているのか。彼らの本音に迫る。
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ワークショップで、給金をもらえてびっくりした20代
野田秀樹(以下 野田) 最初の出会いは、NODA・MAP主催の ワークショップに来てもらったときかな。まだ20代だったよね。
高橋一生(以下 高橋) はい、20代中盤ぐらいかと思います。その前に、大河ドラマ「新選組!」(2004年)で共演しているんですよ。
野田 そうか、あっちのほうが先なのか。「新選組!」には僕はちょっとしか出てないけれどね(笑)。
高橋 勝海舟を演じた野田さんのお芝居が強烈に印象に残っていたので、そのあと、ワークショップに呼ばれて嬉しかったです。
――ワークショップに参加されたときは何を感じましたか。
高橋 参加者がそれぞれアイデアを出して、ひとつのものを作っていく作業がすてきでした。驚いたのが、ちゃんと給金をもらえるんです。
野田 ギャラは大事なことだからね。安くても日銭って意外とうれしいものだよね。
高橋 すごくうれしかったです(笑)。
野田 だから、みんな、NODA・MAPのワークショップに来てくれるんですよ(笑)。ワークショップというと、演劇やダンスのレッスンをして、主催者側が参加者からレッスン料を徴収するものと思われがちですが、欧米だと、主催者側の新作づくりに協力してもらうものとして、参加者に対価を払う場合もあるんです。NODA・MAPは後者としてやっているんですね。
高橋 たとえ日の目を見ることがなくても、無価値になるかもしれないことでも、一日、ワークショップというある種の肉体と頭脳を使う労働をやったあと、お金の入った封筒をもらう感覚がうれしかったんです。給金が出るって、プロとして認められるということですからやる気が湧く人もいると思うんです。
野田 日当のいいところはその場ですぐに使えること。コロナ禍の時期じゃなかったら、ワークショップのあと、あれを持ってそのまま飲みに行けるわけよ。
高橋 僕は封筒を一度握りしめたあと、すぐにばらしてお財布のなかに入れた気がします。別にしておくと、特別なものになりそうだったから、日常、出入り(はいり)するものと混ぜてしまいたかったのかもしれません。
野田 だからこそ、その場で飲み代みたいに使ってしまうほうがいいんだろうね。