意見をはっきり言う高橋さん、野田さんはどう思う?
ーー自分の意見をはっきり言う高橋一生さんを野田さんはどう思いますか。
野田 いいと思いますよ。海外の役者さんと話しているような感じがします。
高橋 海外の役者さんですか。
野田 海外の役者とは、パブで飲んでいても、ずーっとこんな話をしてるね(笑)。最近の日本の役者はあんまりそういう話をしないような印象があるなあ。
高橋 そうかあ。海外の俳優の方と話すのは面白そうですね。
野田 すごく楽しいですよ。
高橋 ただ、僕はふだん、人となんとなく雑談をするのが苦手なんです。話したところでお互いに本質的なことは伝わらないし、人の本質は行動が多くを語るので。
例えば、取材などではだいたい煙に巻きます。どういった状況、相手であったとしても、先程話したようにNOと答えたことをYESにされてしまうし、下手をすると、何も言っていなくてもYES/NOを発言したことにされてしまいますから。
話は少し逸れましたが、単純に人との会話であれば、テーマや目的があると深めていこうとは思っていますけれど。
――さて、もうすこし新作について伺いたいのですが、ワークショップで色々試されたんですよね。
野田 今回、出演する役者さんに参加してもらったことで、どういう芝居にしていくか確信が持てました。
ーーどんなことをそのときはやられたんですか?
野田 内緒だなあ~。
高橋 なかなか話せませんよね。
野田 もろにわかることをやったからね。
ーー野田さんのお芝居は初日までネタバレ厳禁ですけれど、読者の方たちにすこしだけヒントを教えてもらえるとうれしいんですけれども。
野田 そうだよね(笑)。どう言えばいいのかなあ。あ、舞台は恐山なんです。
高橋 そこですか(笑)。恐山だけじゃ、ますますわからないですよ。
野田 でもどこから話していいのかわからないんだよね。恐山で白石加代子さんのセリフからはじめようと思っているのだけれど。
高橋 恐山って、おどろおどろしいイメージがありますけれど、実は意外と現実的らしいです。
野田 そうそう。幻想的かと思いきや、意外と現実っぽいんでしょ。書くにあたって、一回は行ってみたいとは思っていたんですよ。でもコロナも流行しているし、冬場で寒そうだったから断念しました。
高橋 寒いのはいやですね。
野田 その前に、関連書を読んで、だいたいのイメージはつかめました。って、相変わらず、私傲慢ですね。
でも昔、岡本太郎が書いた本にも、恐山は意外と現実的なものなんだよと書いてあって、その感想がいちばん正しいんじゃないかな。この勘、間違っていても、「創造は誤解の積み重ねだ」と思っているので悪しからず。
撮影=三宅史郎/文藝春秋
スタイリング=北澤“momo”寿志/band
ヘア&メイク=赤松絵利/ESPER
高橋一生 1980年、東京都生まれ。映画、ドラマ、舞台など幅広く活躍する。近年の出演作に映画『スパイの妻』『ロマンスドール』『引っ越し大名!』、テレビドラマ『岸辺露伴は動かない』『竜の道 二つの顔の復讐者』『凪のお暇』、舞台『天保十二年のシェイクスピア』(第45回菊田一夫演劇賞受賞)、『レディエント・バーミン』『元禄港歌-千年の恋の森-』『マーキュリー・ファー』などがある。日曜劇場『天国と地獄~サイコな2人~』(TBS系)が放送中。映画『るろうに剣心 最終章 The Beginning』(6月4日公開)に出演する。
野田秀樹 1955年、長崎県生まれ。劇作家、演出家、役者。東京芸術劇場芸術監督、多摩美術大学教授。東京大学在学中に劇団夢の遊眠社を結成、92年解散後、ロンドン留学。帰国後、93年にNODA・MAP設立。主な作品に、『キル』『赤鬼』『パンドラの鐘』『THE BEE』『ザ・キャラクター』『エッグ』『逆鱗』『足跡姫~時代錯誤冬幽霊~』『贋作 桜の森の満開の下』『「Q」:A Night At The Kabuki』などがある。オペラ『フィガロの結婚~庭師は見た!~』や歌舞伎『野田版 研辰の討たれ』『野田版 桜の森の満開の下』なども手掛ける。名誉大英勲章OBE受勲。朝日賞、紫綬褒章受章。
INFORMATION
NODA・MAP 第24回公演『フェイクスピア』
作・演出:野田秀樹
出演:高橋一生
川平慈英 大倉孝二 前田敦子 村岡希美
白石加代子 野田秀樹 橋爪功
●東京公演 5月24日(月)~7月11日(日) 東京芸術劇場プレイハウス
チケット4月発売
●大阪公演 7月15日(木)~25日(日) 新歌舞伎座
チケット6月発売