1ページ目から読む
2/4ページ目
その1ヶ月後に元気な子どもが誕生する。ミネコは出産1ヶ月後からキャバクラに出ることにした。毎日育児をするのがつまらなく、誰とも会えないからだ。実家の母も一度も孫を見に来ることもなく、アキオの母も電話をかけてきたが、「あの人がおじいちゃんなんて言われるのをいやがるのよ~」となまめかしい声で言っただけだ。
そのころ、アキオは客にいちゃもんをつけられたことで相手を殴り、示談にしてもらう交換条件としてパチンコ店を首になった。ミネコが眠っている昼間は、いつもの友達とゲーセンで遊んだが、夕方からは子どもの面倒をみるために帰宅しなければならない。そんな不自由さから、明け方、酒のにおいをさせて帰宅するミネコを殴った。
「アキちゃん、だめよ、腕だけはやめてね。お客にあざがわかるとまずいよ、商売道具だからさ」
部屋の隅で殴られるままになっているミネコは、そうつぶやいた。
生後8カ月の子どもを頭蓋骨陥没で虐待死させた容疑で逮捕されたアキオは、取り調べに対して、悪びれずにこう語った。
「ね、ね、子どもなんてまた産めばいいからさ」
「女房が夜仕事に出かけて、俺が子どものめんどうを見ていたんすよ、ねえ、大変と思いません? 子どもはずっと夜泣きばっかりするし、俺がおっぱいやるわけいかねえし。そりゃイライラしますよ。どんだけゆすっても泣きやまないんすから、あいつ……そんで思わずしつけたる、と叩いたらぐったりしちゃったってわけ。これ、ほんとっすよ、ぜんぶ」
ぐったりした子どもを発見して警察に通報したのはミネコだった。警察官が訪れ、逮捕されたアキオを見て激しくミネコは泣いた。
「アキちゃん、ごめん、ほんとにごめん。待ってるから、ね、ね、子どもなんてまた産めばいいからさ」