借りたお金が返せない!
「突然、会社が給料を払ってくれなくなっちゃったんだよ……」
そう言って消え入りそうな声で話すサラリーマンのお客さま。
「ダンナさんが出て行っちゃったんです! ワタシと子どもを置いて!」
そう言って泣き叫ぶ外国人の奥様。
怖い、世の中って本当に怖い。自分に落ち度がなくても、今まで滞りなく流れていたお金がある日突然、せき止められてしまうことがあるのです。督促というお仕事をしていると、そんな世の中の不条理を垣間見ることがあります。
会社が倒産したり、お給料が払われなくなったり、病気になったり、離婚したり。このご時世、自分が悪くなくても支払いができなくなってしまう事態は、もしかしたら誰にでも起こり得るのかもしれません。
延滞したらどうなる?
私は、新卒で信販会社に入社し、最初に配属されたのが「督促」という仕事を行うコールセンターでした。
督促というのはカードの使用後になんらかの原因で支払いの確認が取れていないお客さまに、電話や手紙で「入金してください」とお願いをするお仕事です。
しかも私が配属されたのはキャッシング専用カードのコールセンター、言ってしまえば借金の取り立てをする部署でした。
ところでカードの支払いを延滞したらどうなるか、知っていますか?
電話を無視したらどうなる?
延滞をしたらいったいどうなってしまうのか。その流れを知っているお客さまはあまりいません。それにちゃんと前もって説明してくれている会社もありません。だから取り立ては怖いものだと思われがちで、延滞をするとサングラスのお兄さんが家に来ると思っている人もいまだに多いようです。
2006年くらいまでは、一部の貸金業者による過酷な取り立ては世間から大バッシングを受けていました。でもそのことをきっかけに法律が改正され、今(2013年現在)では、強引な取り立てはもちろん、お客さまが不快な思いをされるような督促は一切禁止されています。
私は延滞をして1ヶ月半までの「初期」と呼ばれるお客さまの督促を担当していましたが、回収できないまま次の部署へ債権が移ってしまう(移管と言います)お客さまのほとんどは電話にも出てくれず、かけ直してもいただけませんでした。法律が改正され、強引な取り立てや不快な督促はなくなっても、カード会社に電話をするのには抵抗があるようです。
一言もお話しすることができないままカードが使えなくなり、お客さまの延滞情報が信用情報機関に登録されてしまうのはとても残念なことです。信用情報機関に延滞情報が記録されると、他社のカードも使えなくなり、将来ローンを組むときなどにも影響が出てしまいます。
そんなお客さまを見送るたびに、せめて一度でも電話に出てくれたらなぁ、と思わずにはいられませんでした。