「人見知りで話しベタで気弱」を自認する新卒女性が入社し、配属されたのは信販会社の督促部署! 誰からも望まれない電話をかけ続ける環境は日本一ストレスフルな職場といっても過言ではなかった。多重債務者や支払困難顧客たちの想像を絶する言動の数々とは一体どんなものだったのだろう。
現在もコールセンターで働く榎本まみ氏が著した『督促OL 奮闘日記』から一部を抜粋し、かつての激闘の日々で身につけたお金についての基本的なノウハウを紹介する。(全2回の1回目/後編を読む)
◇◇◇
お客さまからのイキナリの恫喝
「俺に金が貸せないとはどういうことだー‼」
「ひぃ!」
ま、また来たか! 電話を取った瞬間飛んできた怒声に、私は足にぐっと力を入れて身構えました。督促の電話で怒鳴られることは日常茶飯事だけど、いまだにクレームや恫喝の電話は怖くて膝が震えそうになります。
「ど、どうされましたか、お客さま?」
ちらりと電話機に表示されたナンバーディスプレイを見ると、非通知。
コールセンターではかかってきた電話番号から、お客さまを特定することができます。でも非通知ではどのお客さまが、どういう理由で電話をかけてきたのかは分かりません。
私の第一のミッションは、このお客さまの怒りをなんとか収めて名前と生年月日を聞き出すこと。カード会社には何十万人と会員がいるので、まず名前と生年月日、そして電話番号や住所などを聞いてお客さまの情報を検索します(お客さまとお話をしたことの記録を残すことは、督促では法律で義務付けられているのです)。
「俺だよ俺!」
「お、お名前と生年月日をお教えいただきたいのですが……」
「俺だよ俺! こないだも電話したじゃねえか、何べんも言わせるな!」
(えー分かんないよー‼)
パソコンのディスプレイの前に、つっぷしたくなる私。
クレームのお客さまの中には、名前も言ってくれず「話は通っているはずだ!」と怒鳴り出すお客さまも多いのですが、何百人といるコールセンターのオペレーターの誰かが受けた電話を「俺だよ俺!」だけをヒントに探すのは、至難の業です。
「いいから早くカードを使えるようにしろって言ってるんだよ!」
延滞をしてカードが止まってしまった場合、カードが単なる「停止」状態ならその後、遅れなく支払いをしていればまた使えるようになる可能性があります(カード会社の方で定期的に審査をしているので、見直しがかかるからです)。
ただ長期間延滞をしてしまって、カード自体が「解約」になってしまった場合、再びカードを使えるようにすることはできません。解約になってしまったカードは、買い物をしたりキャッシングでお金を引き出したりすることはできないのです。