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「なんとかして貸してくれ…」ある債務者が“3月”にお金が必要だった“切実すぎる”ワケ

『督促OL 奮闘日記』より #1

2021/03/14

source : 文春文庫

genre : エンタメ, 読書, 社会, 働き方

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回収システムとは?

 では回収のしくみはどうなっているのでしょうか。もちろん会社や部署などによってかなり違うので、以下は大まかな回収のイメージとしてとらえてみてください。

 まずは「初期」の延滞。引き落とし日から1~2ヶ月間の延滞を初期延滞とか、会社によっては初期未収と呼ぶところも多いです。未収1とか1バケなんて呼んでいるところもあります(バケはバケツのことらしいです。理由は分かりませんが……)。

 ちなみに初期の延滞率は全体の約20%、お客さまの5人に1人は延滞する計算になります。でもそのほとんどが、たまたま銀行口座に残高がなくて引き落としができなかったとか、うっかり忘れていたお客さまなので、遅れてもすぐに入金してくれます。

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 初期の延滞の部署で担当する期間が過ぎると、今度は中期の延滞を担当する部署へ移管になります。だいたいここに来るまでに、延滞したお客さまのうちの9割以上が入金になります。でもその分、中期延滞に移ると、なかなか手ごわいお客さまも多くなります。

 初期の延滞では電話と督促状による督促がメインでしたが、中期になると内容証明郵便を送ったり差し押さえをするなど、法的な回収も行います。法的回収はベテランの社員がやっているので、コールセンターの中で、中期の回収チームはおじいちゃんだらけの不思議な空間でした。

 中期では3ヶ月から半年くらいまでの期間督促をします。その期間が過ぎるとお客さまの債権は、さらに長期の延滞債権を管理する社内の専門の部署や社外の債権回収会社へと移されていくのです。

救済手段だって、ある

 コールセンターをはじめとする信販会社の従業員は、お客さまが支払う利息やカードの手数料からお給料をいただいています。だから、延滞によってカードが使えなくなってしまうのは収入源を絶たれるようなものですから大変な痛手です。そのため、お客さまの延滞をなんとか食い止めるべく、私たちも少しではありますが、救済手段を取れる権限を持っています。

 たとえば支払額の減額や、支払期日の延長。これも会社によって規定が違いますし、すべてのお客さまに行うことはできないなど限界があります。それでも、私たちと電話でお話しいただいて、遅れた理由や入金できる予定などを聞かせていただければ、こういった手段を提案することもできるのです。

 お客さまの多くは、初めから延滞しようと思ってお金を借りているわけではありません。色々な不運が重なって、たまたま今、支払いができなくなっているだけなのです。

 コールセンターは決して怖いところではありません! 無理やり支払いをお願いしたり、声を荒げるようなことも絶対にしません。

 だからもしも万が一、支払いに困ったときはそのことを教えてほしいし、相談してほしいのです。回収のコールセンターはそのためにあるのですから。

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「なんとかして貸してくれ…」ある債務者が“3月”にお金が必要だった“切実すぎる”ワケ

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