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「6時間で最高23人。和歌山でトップの店だったから月100万以上」古株女性が打ち明けた“コロナと色街”

日本色街彷徨 和歌山・天王新地#3

2021/03/13
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「中学の同級生がたまたまサロンに来て…」

 英子はサロン時代に2度逮捕されたという。1度は店内で、もう1回は客引きの時だった。リスクを承知で働き続けたのだった。

「仕事は最初何をされていたんですか?」

「中学卒業してすぐに工場で働いていたことがあるんですよ。うちらが育った土地は和歌山の田舎でね。私は好きな男の子と喋られんような恥ずかしがりやだったんですけどね。それから20年近く経って、最初にサロンで働き始めた時に、中学の同級生がたまたま来たんですよ。真っ暗やし誰にもばれんやろなと思っていたら、終わった瞬間に本名でフルネームで呼ばれたんですよ。同級生は、途中で気がついたらしいんですけど、私はまったく気がつかなかった」

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「それはすごい話ですね」

©八木澤高明

「その彼に言ったんですよ。田舎帰っても言わんでよと、彼だって風俗遊びしてるのバレたら恥ずかしいでしょうし。お互い内緒やでと別れたんです。そうしたら、翌週同級生が5人ぐらい来たんです。順番待ちで並んでたんですよ。そんなに同級生とやりたいんかって聞きましたよ。私は仕事ですからね。そうしたら、『お前が中学の時と変わったと聞いて、見てみたかった』と言われたんです。男とまともに話せなかった、あの子がどんだけ人生変わったんやと、気になったんだって。さすがに女子には黙ってくれてましたけど、私もさすがに言えませんしね。ましてや今もここにいるなんて誰にも言えませんよ。ここにも先輩来たけどな」

「相手は気がついたんですか?」

「私は気がついたけど、向こうは気がつかんかった。だけど向こうも似てると思ったんやろうね。『お姉さんどこ出身』って聞かれたんで、三重出身ですって言ったんです」

「今度は父親の借金が発覚したんです」

「ご両親は、お元気なんですか?」

「父親は今施設に入ってますけど、母親はもう亡くなりました。こんな仕事をしているんで、母親の死に目には会ってないんですよ。ただ、父親とは仲が良かったんで、施設に入る前に一度和歌山に呼んで何年か一緒に暮らしたことがあったんですよ。それがまたトラブルを生んだんやけどな」

「どんなトラブルだったんですか?」

©八木澤高明

「その頃借金返し終えて、風俗とも足を洗っとんだけど、今度は父親の借金が発覚したんです。幼馴染がいて、その借金の連帯保証人になっていたんです。友達が飛んで、父親に降りかかってきたんです。父親は年金暮らしでしたので、返すあてもないので、私はここに復帰して、月に5万ずつ返したんです。そういう星の下に生まれて来ているんですね」

「ご兄弟は?」

「兄が3人、借金して逃げた姉がひとりの4人いるんですが、4人とはずっと縁切っていたんですよ。それがあるところから、姉の電話番号が手に入ったんです。散々迷惑をかけられたから、どうしようか思ったんですけど、電話をかけたんです。それで二十数年ぶりに姉の声を聞いたら、だーっと涙が出てきたんです。借金は終えてましたし、もういいかって許す気になりましたね。それから、一緒に韓国旅行に行ったりして、仲良く過ごしていたんですけど、2年前に胃ガンで亡くなりました」