2月4日、Yahoo!ニュースに「車に衝突され、意識不明の息子 9年半介護続ける両親の割り切れぬ思い【親なき後を生きる】」という記事が掲載された。書いたのは、ジャーナリストの柳原三佳氏だ。
2011年9月11日の21時ごろ、当時18歳だった男性・Aさん(27)は大阪府泉南市の国道をバイクで走行中、22歳の青年が運転する乗用車と衝突し、遷延性(せんえんせい)意識障害(いわゆる植物状態)となった。記事はそのAさんの一家が9年半にわたる介護生活と事故加害者への複雑な心中を語ったものだ。
記事内で、加害者の青年の名前は明かされていない。しかし、Aさんの母親が同記事をある有名若手経営者の名前をハッシュタグをつけて拡散したことで、ネットは一気に炎上した。
その人物とは、経営コンサルティングや投資事業を手掛けるEARTHホールディングス株式会社の代表取締役社長・辻敬太氏(31)。人材育成家として「じっくり聞いタロウ」(テレビ東京系)などに出演するほか、地元の関西では「辻敬太のハピジャパ」(KBS京都テレビ)でメインコメンテーターを務めている。「人生巻き込んだ者勝ち」(万来舎)などの著書もある、いま注目を集める若手経営者だ。
「辻氏の運営するオンラインサロン『辻敬太起業サロン』は、会員数は700名とそこまで多くありませんが、月の会費が3万円と高額なため、月単位の売り上げではキングコング西野氏の運営する『西野亮廣エンタメ研究所』に次いで国内2位となっています。これは、堀江貴文氏や落合陽一氏などの著名人を上回るということです」(テレビ局関係者)
「動画では保身としか思えない言葉ばかり」
2月中旬からネットでは辻氏の名前が交通事故の加害者として一気に広まり、「事故を隠蔽している」「反省していない」などの批判が相次いだ。それを受けて辻氏は、2月27日に自らのYouTubeチャンネルで事故について言及した動画を公開している。
《(過去に過ちを犯してしまった)そんな人たちが、じゃあもう挑戦したらダメなんですかっていう話なんですよ僕は。(中略)挑戦できなくなるんですよ、はっきり言って、一回失敗したり、一回こけたり、一回何か過ちを犯してしまうと一生ね、立ち直れなくなるんすよ。でもそういう人たちもたくさんいる中で、僕はそれがなんかほんとに違うと思ってるんで》
《事故を起こしたのは事実です。(被害者の)お父さんお母さんに、今も謝罪の気持ちはもちろん、本人にも謝罪の気持ちは忘れていませんし、この10年間忘れたこともないです》(2021年2月27日 辻敬太氏YouTubeチャンネルより)
しかし彼の動画を見て、Aさんの両親は複雑な表情を浮かべている。
「私たちにしてみれば、彼の動画で語られているのは保身としか思えない言葉ばかりです。裁判以降、彼から実際に謝罪を受けたことは一度もありません。腹が立つというよりは、呆れてしまいました」(Aさんの父)
文春オンライン特集班は、Aさん一家と辻敬太氏双方の徹底取材を行った。すると交通事故の被害者家族と加害者が平行線を描いた10年間が浮かび上がってきた。