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「あからさまな性差別や人種差別」ヘンリー王子が怒りとともに発表した“異例の声明”とは

『ヘンリー王子とメーガン妃 英国王室 家族の真実』より #4

2021/03/09

source : 文春新書

genre : ニュース, 国際, 社会, 読書

前代未聞の声明を発表

 しかしこうした報じ方、さらにその取材手法はヘンリー王子にとって我慢できないものだったようだ。この1週間後の11月8日、ケンジントン宮殿は前代未聞の声明を出した。

「王子のガールフレンドであるメーガンさんは、暴言や嫌がらせの標的になっています。

 全国版の新聞の1面やソーシャルメディア、インターネット上にはあからさまな性差別や人種差別があふれています」

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 サラリと書いているが、王子が彼女との交際を公式に認めたのは、実はこれが初めてである。クレシダ・ボナスとの破局以降も様々な女性と関係を持った王子だが、出会ってからわずか4ヶ月でメーガン妃はそれまでの女性たちとは違う特別な存在だと宣言したことになる。

雨の中見つめあうヘンリー王子とメーガン妃 ©getty

「彼女の母親は、カメラマンたちのせいで自宅に入るのも困難となっています。記者とカメラマンが彼女の自宅に不法侵入しようとして、警察へ通報が入ったこともありました。

 王子はマークルさんの安全を案じており、彼女を守ることができないことに失望しています。交際してまだ数ヶ月のマークルさんがこのような報道の嵐にさらされるのは間違っています。

 コメンテーターたちは、『これは彼女が払わなくてはいけない代償だ』などと言うでしょう。しかし王子は同意しません。これはゲームではありません。彼女の、そして彼の人生なのです」

自ら「異例だ」と言及したヘンリー王子

 そして、コメントの最後では自ら「異例だ」と言及している。

「このような声明を発表するのが異例だというのはわかっています。しかし、なぜ公に話す必要があると感じたかを、公正な心を持つ人々が理解してくれることを願っています」

©iStock.com

 BBCやスカイニュース、「ガーディアン」紙や「タイムズ」紙などイギリスの大手メディアは、この段階では王子の交際について深く報じていなかった。イギリスではダイアナ元妃が過剰な取材・報道により最終的には事故死したという経験から、特に王室の取材に対しては節度をもっていると感じさせられることが多い。

 しかし、いわゆるパパラッチは別である。また母ドリアさんの自宅がロサンゼルスにあるため、アメリカの芸能メディアも取材に動いていた。結果、王子が普段経験しないほど取材現場が過熱していたのだろう。

 前に述べたようにヘンリー王子の交際相手であったチェルシー・デイビーは、メディアからの過剰な注目に耐えかね彼のもとを去ったと言われている。ヘンリー王子は苦い経験を繰り返すのを避けるため、異例の声明に踏み切ったのだ。

 この声明は効果てきめんだった。これ以降、少なくともイギリスではヘンリー王子とメーガン妃に関する報道は沈静化した。

 さらに2人もレストランやイベントに一緒に出掛けるのでなく、自宅などで静かに過ごすデートを選択していた。世間から離れてお互いに向き合い、静かに愛を育んでいった。