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太田房江の府知事選では400社の業者が集結 関西談合組織による“ゼネコン選挙”の怪しい実態

『泥のカネ 裏金王・水谷功と権力者の饗宴』より #14

2021/03/15

source : 文春文庫

genre : ニュース, 社会, 政治, 経済, 読書

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自民党が頼ったゼネコンの担当者

 太田は、旧通産省から知事選に出馬する女性初のキャリア官僚という強みを前面に打ち出した。自民党の中央本部と民主党が相乗りして推した。しかし、ここで足元の自民党府議団が清風学園の平岡を擁立する、というねじれ現象が起きる。党が二分されるまた裂き選挙となり、共産党が漁夫の利を得る可能性もあった。

 話題性はあるものの、推薦した自民党としては、元通産官僚というだけでは心もとない。そこで、危機感を抱いた自民党の頼った先が、ゼネコンの談合担当者たちだったのである。大林組常務の山本正明が太田陣営の取りまとめ役として音頭をとった。関西の建築談合で竹中工務店の松永と覇権争いを演じてきた業界のドンの一人だ。

看板をかけ替え温存されてきた組織

 過去、建設業界は公然と談合活動をしてきた。大阪の建築談合では「栄会」や「錦城クラブ」といった看板を堂々と掲げ、談合サロンを運営した。そこに各社の担当者が集う仕組みだ。しかし、時代とともに談合批判が強まるにつれ、表立った活動がやりづらくなる。次第に世間の風当たりを気にし、談合サロンは形を変えていく。

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 たとえば建築分野の談合担当者が集う「錦城クラブ」は、趣味の懇親会にカモフラージュするため、「北浜八趣会」と看板を変えた時期もある。さらに平島の告発により、談合の実態が世間に知れた90年代後半、談合組織は表向き解散し、常設サロンを持たなくなる。だが、その談合機能は温存され、ホテルなどを借りて、工事の割り振りのセレモニーがおこなわれていたという。

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 談合組織の解散は、懇親会の名称や話し合いをするサロンを持たなくなったというだけの話に過ぎない。そして組織が温存された理由は、談合が政官界に必要とされてきたからにほかならない。政治とカネの縁が切っても切れないように、建設会社と政治家や役人たちのつながりは、たやすく途絶えることはない。それはお互いが求めあってきた結果でもある。