「人見知りで話しベタで気弱」を自認する新卒女性が入社し、配属されたのは信販会社の督促部署! 誰からも望まれない電話をかけ続ける環境は日本一ストレスフルな職場といっても過言ではなかった。多重債務者や支払困難顧客たちの想像を絶する言動の数々とは一体どんなものだったのだろう。
現在もコールセンターで働く榎本まみ氏が著した『督促OL 奮闘日記』(文春文庫)から一部を抜粋し、かつての激闘の日々で身につけたお金についての基本的なノウハウを紹介する。(全2回の1回目/後編を読む)
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結婚の条件
「結婚するなら、相手の年収は1000万円以上欲しいよねー!」
「だよねー! そんくらいあれば自分は働かなくていいし、理想的~」
「ちょっと待ったぁぁぁ‼」
ある日友人たちとカフェでお茶をしていたときのこと。何気なく婚活の話となり、どんな人と結婚をしたいかという話になりました。
妙齢の女子が三人。言うだけならタダとばかりに、ありとあらゆる都合のいい条件があげられます。そんな中、話の盛り上がりのピークに結婚相手の条件として話題に出たのが経済力、つまり年収の話でした。
ただ私はこの手の話題になると、どうしても「異議あり!」とつっこまずにはいられないのです。
年収1000万ということは
1000万円とまではいかなくとも、確かに年収が高い男性は結婚相手として魅力的です。よく婚活特集のテレビ番組などでも結婚相手の条件にあげられています。
ですが、どうもみんな年収が高い=経済力があると安直に考え過ぎのような気がするのです。
「な、何、どうしたのN本⁉」
突然立ち上がった私に目を白黒させる目の前の友人たち。私はゆらりとテーブルに手をつくと口の端を歪めて悪い顔で問いかけます。
「でもさぁ、年収1000万円でも、借金があったらどうする……?」
「へっ……?」
仲良く同時に声を裏返す友人たち。その顔には「年収1000万円も稼ぐ人が、借金なんかするわけないじゃん」と書いてあります。
「甘い! あまーい! 稼いでいるからって借金がないとは限らないんですよ、お嬢さんたち!」
「えっ、ど、どうしたの?」
「なんでそんなに必死なの……?」
どん引く二人に私は切々と説きました。「年収が1000万円ってことは、借入可能金額は333万、年収が大きくなればなるほど借金できる金額も大きくなるんだよー!」