「自分の“好き”を見つけてもらいたい」
多くの雑誌では、紙の売り上げが苦戦する中で、デジタルシフトを叫ぶ媒体も多い。ただ、少なくとも『小学一年生』のような児童学習誌においては、紙の優位さは間違いなくあるのだと長竹編集長はいう。
「デジタルに全振りするというよりは、紙とデジタルの融合を考えた立体的な企画作りが大事なのかなと思います。今度ウチの編集部から書籍が出るんですけど、それはアプリを使って段ボールで作ったロボットを動かして…みたいなものなんです。動力があるロボットを自分の手で組み立ててもらって、そのプログラミングはアプリで行う。やり方は本を見る。そういった本とアプリの連動の形を模索していけたらと思います」
時代によって形は変わっても、これまで小学生たちの目を輝かせてきた児童学習誌の存在感を変えてはいけないのだ。
「普通の『教育』だったら学校に行けばいいし、『遊び』だけなら漫画や、エンタメの雑誌はいくらでもある。その間でいかに良いものを作るのか。子どもにとっては遊びでも、いつのまにか学習しているという感じでしょうか。子どもっていろんなことに興味があるけど、楽しいことしかやらない。その“好き”を見つけるのが、結局、一番重要で。大人もそうですけど、意外と自分の好きが見つからなくて、『世の中こうだから、これやらなきゃ』みたいなことを優先しちゃいがちじゃないですか」
幅広い、上質な情報がなければ、本当はすごい才能があるのに自分で“好き”に気づけなくなってしまう。だからこそ「こういった学習雑誌を通して色んなジャンルのものに触れてほしい」と長竹編集長は言う。
「一見すれば遊びなんだけど、それは実は大人が本気で子どもたちのためにクリエイトしたコンテンツ。子どもだましじゃないんです。そういうものに触れることで、自分の“好き”を見つけてもらって、未来を作る糧にしてほしいですね。時代は変わっても、そういう芯の部分は変わらないんじゃないかと思います」
撮影=山元茂樹/文藝春秋