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「包茎は過去の商品」

 批判の対象となったのは包茎病院だけではなかった。わずかではあるが、広告を掲載してきたメディアや、そこでふりまかれた「知」を相対化するような記事も2010年代はじめに登場する。インディペンデント系雑誌『紙の爆弾』は、「「コンプレックス商法」を蔓延させたメディアの罪」という見出しのもとで、危険のひそむ包茎手術等の広告を儲け目的で掲載してきた雑誌を批判している。サラ金や宗教団体が社会問題になるとその宣伝を載せるメディアの倫理が問われるのだから、人命にかかわる医療となればいっそうの配慮が求められるべきであると力説している(*6)

*6 『紙の爆弾』2011年7月、66~67頁

『SPA!』は、日本人が信じこんでいる「定説」を検証する記事のなかで「包茎は短小・早漏になりやすい」をその一例として取り上げ、「むしろ手術で早漏になる例もある」というのが「真実」だと述べている。定説の誤りをレクチャーしている医師は、「包皮が亀頭の成長を阻害する」という定説も誤りであると、ここで語っている。ちなみにこの医師は、「包茎手術後は、亀頭が圧迫から解放され、いろいろな面でプラスになり、男はたくましくなる」という、手術による亀頭増大効果をにおわせる説を無批判に紹介していたことがある(*7)。どこかの時点で考えが変わったのだろうか。

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*7 『SPA!』2010年2月23日、116頁、『財界展望』1982年4月、127頁

©文藝春秋

 2013年は「ひとつの時代の終わり」を感じさせる出来事がふたつ起きた。ひとつは、包茎ビジネスを牽引してきた高須がその終焉を宣言するかのようなツイートをしたことである。「香料、お茶、阿片と儲かる商品は移り変わる。今度は何かな?包茎は過去の商品になってしまったな」と書いている(*8)。包茎手術が意図的に作り上げられた「商品」であることを高須は2007年のインタビュー(*9)ですでに暴露していたが、その商品も売れなくなっていることを示唆する内容である。

*8 https://twitter.com/katsuyatakasu/status/304393036325076992、2020年9月18日アクセス
*9 『週刊プレイボーイ』2007年6月11日、81~82頁