後悔しているひとを山ほど見てきた
もちろんそういった仕事に理解のある男性もいる。けれど、理解のないひとがいるのも現実だ。
「選ばれる側になっちゃうんだよ」
と中沢さんは言った。
こちらから好きなひとを選ぶことができなくなる。現実問題として、理解のある男性のほうが圧倒的少数だ。好きなひとと一緒になるときにも、いい相手を探すぞ、というときにも不利になる。
「気が乗らないんだったらやめておいたほうがいいと思うよ」
珍しく、意見を言った中沢さん。
「そこはね、もう、後悔しているひとを山ほど見てきたので」
後悔する気持ちは、きっと「怯え」にあるのだろう。AVから足を洗っても、いつ見つけられてしまうかわからない恐怖。いまは1回ネットにアップされてしまえば、永遠に「残って」しまう。夫や子ども、同僚や友人に、見つかってしまったら……そうビクビクして過ごすのは、つらすぎる。
「AVの撮影だと聞かされずに勝手に撮られ、海外のサーバに上げられてしまった子もいました。その子は泣き寝入りせずに戦おうとしたんです。ウチに置いてある、そういった被害者に寄り添うNPOのチラシを見て。
でも、海外のサイトは、日本の法律では裁けなかった。結局、いまもインターネット上のどこかに、その動画は残っているはずです」
「みんな最後はやりたいようにやりますね(笑)」
後悔したり涙を流したりしているお客さんをたくさん見てきたからこそ、目の前のひとがそういう未来を生きることがないように、はっきりとアドバイスしたのだろう。
ただ、アドバイスをもらったひとは、みんな、それに従うのだろうか?
「いやあ、そうでもないです。その子も『やっぱりお金がないから』ってAVの事務所に連絡してみたらしいです。ただ、AV業界も撮影は自粛していて仕事がないって言われたそうで。ほかにも、まあ……みんな最後はやりたいようにやりますね(笑)」
中沢さんはそう言ってから付け加えた。
「べつにいいんですよ、それは。なにか助言したからってそれに従わなければいけないという義理はないんですから」
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