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 そんな「ケータイのネット」は、スマホに取って代わられるまで続いた。筆者は00年代後半に学習塾で講師をしていたが、その頃の女子中学生たちが「前略プロフィール」と「魔法のiらんど」を盛んに使っていたことを覚えている。実名・顔出しを前提にした彼女たちのコミュニケーションのスタイルは、今日のSNSの形に近づいていた。

現在はKADOKAWAが運営する小説投稿サイトとして存在する「魔法のiらんど」

「使い放題」が当たり前になったけれど……

「パケ死」が社会問題になった後、「パケ・ホーダイ」などのパケット定額サービスが登場すると情勢は一変する。概ね2005年頃には「定額・使い放題」という料金体系が一般化し、「パケ死」の声は聞かれなくなった。したがって「パケ死」というのは、約5年間のみの特殊な現象だったといえる。

 スマホ時代になって社会全体の通信トラフィックが激増すると、「パケ死」への反省から「通信量上限制」という料金体系が採用されるようになり、代わって「ギガ不足」が問題になった。また冒頭に述べたように、今日ではケータイの料金を下げようと、政治家や官僚が必死になっている。

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 iモードのデビューから22年が経ち、モバイルネットワークは社会の最重要インフラにまで発展した。しかしガラケー時代を知る世代としては、ゆっくりとしか読み込まれないケータイサイトや、壮絶な「パケ死」の体験も忘れられない。

 今月よりいよいよスマホは「月額3000円」の時代に入るわけだが、「現代のネットワークは、我々の『パケ死』の上に築かれた」と言ったら、言い過ぎだろうか。