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 しかし当初のケータイ向けコンテンツはどれも10パケットに収まる程度であり、ひとつひとつは大したデータ量ではなかった。日に何度もアクセスするようなコンテンツもなかったため、まさか数年後に何十万人ものユーザーが「パケ死」に及ぶとは考えられていなかったのだろう。

コナミの『パワプロ』を遊んでパケ死!

 そんな1999年。中学1年生だった筆者は都内の私立男子校に通っていたのだが、中央線の電車で1時間かけて通学する間、持たされていたのはポケットラジオとテレホンカードだった。

 教室では休み時間のたびに、「ケータイ組」が最新機種を見せ合いながら談笑している。割って入ってテレホンカードなんか見せても笑われるだけで、翌年に初めてのケータイを持つまでは、なんだか肩身が狭かった。

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 あるとき友人の2人が、モノクロ液晶の携帯電話をそれぞれ持ち寄って『パワプロ』を遊んでいた。「ケータイでゲームができるはずがない!」と画面を覗き込んで見てみたところ、内容は、Webページを使った紙芝居仕立てのアドベンチャー。ゲームと呼べるか微妙な代物である。

 次の月に知ったことだが、彼らはこの単純なゲームを楽しんだ代償として、何万円ものパケット通信料を請求されたらしい。この時はまだ「パケ死」という言葉はなかったが、やはり両親から大目玉を食ったそうだ。

 モノクロ紙芝居のすべての絵を見るだけで、プレステ1台が余裕で買えるほどの金額がもっていかれるのだから、コナミもつくづく罪なゲームを作ったものだと思う。

堪え性がない人間を陥れる「間欠的通信」の罠

 筆者の記憶をたどる限りでは、「パケ死」という言葉が盛んに聞かれるようになったのは、すこし下って2002年頃である。

©iStock.com

 若者言葉やネットスラングにありがちなことだが、この「パケ死」という言葉は、極めて強い表現になっている。ケータイの使いすぎによる結果が「死」だというのだから、当時のユーザーがいかに高額請求を恐れていたかがわかる。

 携帯電話のパケット通信は、パソコンのネット接続と異なる「間欠的通信」である。NTTのように3分10円でずっと通信を続けるという仕組みではなくて、必要なときだけ通信をリクエストし、その都度お金がかかるかたちだ。

 この方式は、メールの送信や単発の調べ物には向いているが、チャットには向かない。BBS(電子掲示板)のチェックも、まめにしようとすればするほど費用がかさんでしまう。