通称「姐さん」と呼ばれる暴力団組長の妻。若い衆に厳しくもあり、嫌味を言うこともあれば、時には気風のよさを示すことも。姐さんたちの様々な人物像が警察当局の幹部や暴力団幹部の証言で浮かび上がる。
大ヒット映画「極道の妻たち」には、姐さんたちが集まって宴会を開催、カラオケなどに興じるシーンも描かれていたが、同様の宴席は実際に開かれていたとの証言がある。ただ、一部の暴力団幹部は「商売をしている姐さんは困りもの」と語っている。
「あの人は1万円を置いて行くのに…」
東京で活動している指定暴力団幹部が、姐さんとの関係について内情の一端を明かす。
「ヤクザの姐さんには“専業”も多いが、クラブやスナック、居酒屋などのお店をやっていることも少なくない。自分のところでも、姐さんが飲食店をやっていて、たまに昼飯などで立ち寄っていた。その時には『会計はこれで』と釣銭は受け取らずに毎回1万円を置いて行くことが多かった。
しばらくして自分と同じクラスの幹部の何人かが、『困りますよ』と言って来た。何だと思ったら、姐さんが『あの人は1万円を置いて行くのに、あんたたちは値段通りにしか払わないの?』と嫌味を言われたという。『自分たちも寄るたびに1万円を置いて行かねばならなくて、困ってしまって』ということだった」
この幹部だけではなく、「姐さんが商売をしていると困りものだ」とこぼす者は多い。
「定期的に顔を出すようにするし、食事だけをしても料金以上に払うとか。別の組織のことだが、姐さんが洋服店をやっているところがある。ここでは幹部も若い衆も、必ず姐さんの店で服を買う。当然、ほかの店より値段は高い。それでも利用する。親分に気に入られることは必要だが、姐さんに気を遣うことも必要。組織の中で競争になる」(同前)
暴力団の幹部や若い衆にとっては、組長への忠誠だけでなく、姐さんへの気遣いも重要なようだ。