姐さんが可愛がるネコが見つからず…
夜になっても、気遣いは絶えない。
「姐さんが夜の街に出かけた後に、ほろ酔いの上機嫌で事務所に戻ってくる。すると、『車で送ってちょうだい』となることも少なくなかった」
自らも夜遊びに出歩く割には、組長が帰宅しないことが多くなると、姐さんの機嫌が悪くなる。
「どこかの女のところにでも行っているのだろうと勝手に勘繰って、『あんた、ウチの人がどこにいるのか知っているなら教えてちょうだい』『本当は知っているのだろう?』などと問い詰められて困ったこともあった」
ある組織では飼いネコをめぐって大騒動になったことがあるという。
「この組織では本家で姐さんがネコを飼っていて、部屋住みの若い衆たちも面倒をみていた。ある時、姐さんが可愛がっていたネコがいなくなった。すると姐さんが『私のネコはどうした?』と探し始めた。若い衆が数人で本家の建物の中を探し回ったが、見つからなかった。どこかに逃げてしまっていた。そうしたら、若い衆が『お前たち、何しているのだ』と責められていた。さすがに可哀そうだった」
若い衆に「指を詰めて持って来い」
別の指定暴力団の幹部が少々強権的な姐さんについて実情を明かす。
「ヤクザの社会では女はかしこまって、旦那のやることには口を挟まず大人しくしているものというイメージがあるかもしれないが、そうではない人もいるのは事実。映画『極道の妻たち』で岩下志麻が演じた主役のように、力を振るう姐さんもいる。ある組織では、若い衆に不始末があると、姐さんがすぐに『指を詰めて持って来い』と言い出すという。この組では、親分が姐さんのこうした振る舞いを知っていたが、見て見ぬふりをしていた。
別の組織では、とにかく姐さんのえり好みが激しく部屋住みの若い衆たちへの依怙贔屓が激しかった。嫌われてしまうと、口もきいてくれない。特に不祥事や不始末を引き起こしたという訳でもないのに、姐さんが怖くて逃げ出して行方が分からなくなった若い衆は少なくなかった」
姐さんが少々、横柄な振る舞いをしていても、親分が健在であれば問題ないが、夫である親分が亡くなった場合には立場が揺らいでしまう。
若い衆に意地悪を続けてきたある組織の姐さんは、親分が死去すると「私はもう、あんたたちとは関係ない」と宣言して出て行ってしまって、その後、連絡も取れなくなったという。