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親分が亡くなった後、姐さんが慕われるケースも
その一方で、若い衆に慕われていた姐さんもいた。警察当局で30年近く暴力団犯罪の捜査を続けてきた刑事が語る。
「かなり前の話だが、業界ではそれなりの人物として知られ、実力、器量を備えた、人望があったヤクザの親分が亡くなった。この親分は先代から組を引き継いだ時に、組は少し勢力が衰えかけていたが、かなり盛り返して組織を大きくした実力者だった。
この組では、親分が亡くなった後も、組の幹部や若い衆が未亡人の姐さんの誕生日に集まったり、暮れや正月にあいさつに立ち寄ったりしていた。かなり横柄な姐さんがいるなか、これは珍しいケースだ。警察の立場でこういう言い方はおかしいが、組長は人格者だったし、姐さんもしっかりした人だった。だから、若い衆は恩義に感じていつまでも姐さんのことを気にかけていたのだろう」
そして警察社会も似たようなところがあると自嘲気味に話す。
「警察署では当然、署長がトップ。警察署近くの官舎住まいも多いから、署長をはじめ、同じ署に勤務している警察官は仕事以外でも食事会やレクリエーションなどで家族も一緒のことがある。そういうときに、不思議なことに署長の奥さんがなぜか偉そうにしていることがある。しかし署長が人格者だと、奥さんも腰が低く謙虚な人であることが多い」
「姐さん」の視点で業界を見渡すと、また別の世界が広がっているようだ。