「賭けマージャン問題で引責辞任した黒川弘務元東京高検検事長が3月18日、一転、単純賭博罪で東京地検特捜部に略式起訴されました。罰金刑ではありますが、元検察ナンバー2が在職中の行動を罪に問われて“前科者”となるのです。前代未聞のことです」
ある法曹関係者はこう語る。賭けマージャン問題は2020年5月20日、「週刊文春」がウェブサイト上で報道して発覚。法務省の調査に黒川氏は事実関係を認め、訓告処分を受けて同22日に辞任した。
特捜部が市民感覚をくみ取った……?
特捜部は同年7月、賭博罪の成立を認定した上で社会的制裁を受けたことなどを考慮し、不起訴処分(起訴猶予)としたが、東京第6検察審査会は同年12月、「検事長の職にあり、刑事罰の対象となる違法行為を自制し、抑止すべき立場にあった」として「起訴相当」と議決していた。
「黒川氏は緊急事態宣言期間中の2020年4月13日~5月14日の間に産経新聞記者宅で計4回、記者ら3人と1000点を100円に換算する『点ピン』で賭けマージャンを行っていました。以前は検審の議決に法的拘束力はありませんでしたが、市民感覚を反映させる司法改革の一環として検察審査会法が改正され、2009年5月から法的拘束力のある制度に変わりました。
特に大きな変更点は、検察の判断に反して『起訴相当』との議決が2度下されると、強制起訴されるという点です。検察が独占してきた起訴の権限に風穴を開けたのです。検察の判断を“素人”が覆すわけですから、強制起訴されても無罪が出るケースは多いですが、有罪となったものもあるのです」(同前)
一転して略式起訴して罪に問うという判断は、特捜部が市民感覚をくみ取った結果とみることもできるだろう。だが、あるベテランの司法記者は、こう異議を唱える。