政治家は似た者同士だから、いろんな人が出てくれた
――ところで『電波少年』には政治家も総理大臣からなにから多くの人が出ていますね。「大臣の椅子に座りたい」シリーズとか「村山(富市)委員長の眉毛を切りたい」とか。
「大臣の椅子に座りたい」の最初は森喜朗さん(当時、通産大臣)なんですよ。政治家は選挙が一番だし、選挙民と直結しています。『電波少年』に出て、他愛もないことに付き合っていると選挙区でものすごく評判がよくなる。そのことを森さんはよくわかっているから、愛想がすごくよかったですね(笑)。まあ、視聴者と直結している僕らと政治家は似た者同士なんですね。だからいろんな人が出てくれました。
それに僕らはバカみたいにやっているだけだから、政治家のみなさんも松村たちを相手していても嫌じゃない、そんな感じですよ。番組自体、裏がないというか他愛ないというか、それこそ『電波少年』は少年ですから。
――「バカのフリしてお願いしてみた」みたいな感じでしょうか?
バカなんですよ、バカのふりじゃなくて(笑)。
――大臣などに記者クラブを飛ばして取材するとクレームが入るとよく聞きますが…。
「報道が怒っているぞ」なんて言われることもありました。報道局の偉い人が文句を言いに来ては、制作局長が「すみませんねえ。土屋を怒っておきますから」なんて言って話を収めて。そんなことしているうちに「あいつを怒っても、しかたがないな」となっていった感じですね。
――『電波少年』を作っていくうちに、テレビ制作者としての土屋さんが発見したこと、気づいたことは?
番組をやっているうちに「松本・松村が面白いんじゃなくて、この番組を考えているスタッフが面白いんじゃない?」って思うようになりまして(笑)。僕は遠慮なく、そう思いますから。極端なことを言えば、「誰でも面白くすることができるんじゃないか?」と思ったんです。それでやった企画が、猿岩石のヒッチハイクなんですよ。かっこよくいえば、人間ってぜんぶ面白い。誰だって面白いんです(笑)。(#2へ続く)
写真=石川啓次/文藝春秋