――オリジナリティのあるものは、1人の人間の確信から生まれるんですね!
あの番組のVTRは簡単に撮れそうでしょう? 子供がお使いにいくところを、後ろからおっかけて撮ればいいんだから。でも撮れないんですって。1000回やって6本だから、166本に1本しか使えるものが撮れない。だからどこも、この企画をパクれないんですよ。この前佐藤さんがゲストに来たときに「使えるのは何本に1本ですか?」と聞いたら「10本に1本だ」と言ったんですが、嘘だなと思っています。
普通の人なら100回やってもダメなら諦めますよ。でも、佐藤孝吉は「撮れるんだ」と思っているから諦めない。50歳過ぎてもそこまでやる。すごいですよ。よく「ゼロイチ」(0から企画を生み出す)とか言うけれども、その核心は信じることですよ。面白いはずだ、撮れるはずだ、と。それを信じるチカラがあるかないかだけです。
「面白さ」への執着心がテレビの歴史を作ってきた
――こうした人が会社の先輩としていたのは、土屋さんにとって大きい?
でかいですよね。『電波少年W』でテレビ界の先達の言葉を紹介して、それを残そうとしているのは、それがあります。
どこか壊れているけど、ものすごくこだわりが強い。テレビで人を楽しませることがすごく好きで、そのためには全部なげうつ迫力がある。人に面白いと言わせる、人の感情をゆりうごかす、そうしたことに対する執着心がすごくある。こういう人たちが、テレビの歴史を作ってきたんです。
そうしてできたテレビ番組に熱狂したり興奮したりしてきた多くの視聴者の記憶を、『電波少年W』で集めてデータベースを作ろうと思っています。
テレビ番組の歴史は約70年なんですが、『電波少年W』のウェブサイトに年代ごとに箱のようなものを作って、番組ごとにどんどん自分の記憶を入れていってもらう。そんなことをやっていたら昔のテレビマンが「この番組の照明は俺がやっていた」とか言い出して、いろいろ書き込んでくれるかもしれない。
そうやって何年かかってでも、テレビの記憶を集めたデータベースを作る。それを各局にあるVTRのライブラリと紐づけたい。フジテレビオンデマンドもあれば日テレのHulu、TBSならParaviがあるから、すべてのテレビコンテンツがネット上でそこに紐づくことがありうる。それをやろうと考えています。
写真=石川啓次/文藝春秋
INFORMATION
電波少年W~あなたのテレビの記憶を集めた~い!~
毎回新作を放送&配信。
放送は一週間おきの隔週放送、配信は放送のない週も毎週配信!
◆配信:毎週⽉曜よる8:00 [WOWOWオンデマンド]ほか
放送:隔週月曜よる8:00[無料放送][WOWOWプライム]
◆出演者:松村邦洋、松本明子
◆総合演出:土屋敏男
◆番組公式サイト:https://denpa.wowow.co.jp/
◆番組公式Twitter:@wowow_denpa